理学療法士という職業を目指すにあたって、自分に向いているのか不安に感じる人も多いでしょう。現役理学療法士の私が臨床現場で感じる、理学療法士に向いている人の適性や求められる能力についてご説明します。
- 記事の執筆者:久留米リハビリテーション学院 教務部長 大坪健一
- 記事の監修者:医療法人八女発心会 姫野病院 整形外科医 姫野信吉
理学療法士として成長したいと思う向上心
最近の養成学校における教育は素晴らしいものであり、一生懸命に勉強してきた学生は臨床でも十分に通用し、ある程度の臨床経験を積むことで理学療法士として仕事を行うことができます。しかし、学校で学習することはあくまでも理学療法士として知っておくべき基本的なことであり、応用的な手技については臨床に出てから学習することになります。
学校の授業でも簡単には習うかもしれませんが、理学療法士が使用する手技にはたくさんの種類があり、AKAやPNF、関節モビライゼーション、ボバース法などがその例です。いずれの手技も会得するのに長い期間が必要であり、自分を成長させる向上心がないと会得することはできません。 また、医学は常に進歩しており、新しい理論や技術、治療法がどんどん出てきます。患者に最新の治療を提供するためには、新しいことを取り入れる柔軟性と意欲が必要になります。
仕事を行うようになると理学療法士同士は仲間でもあり、ライバルでもあります。そのため、他の理学療法士に負けないようにがんばる気持ちが必要です。同僚から認められるようになれば、仕事はしやすくなります。
他者とのコミュニケーション能力
理学療法士におけるコミュニケーション能力というのは、単に話が上手いということではありません。相手の気持ちに配慮した対応ができることや、大事なことを正確に確実に伝えることができる能力のことです。そのため、意識して心がけることや経験を積むことで向上させられる能力といえます。 理学療法士は患者やその家族、他職種、同僚など幅広い人たちとコミュニケーションをとることが必要です。
患者へのリハビリテーションはコミュニケーションをとることから始まります。最初のコミュニケーションでいい印象を持ってもらえるとその後の治療が行いやすくなり、患者からの信頼も得やすくなります。
最近では退院に向けた自宅訪問などで家族と関わることも増えています。理学療法士は治療している患者のことを中心に話をしがちですが、家族の気持ちや都合にも配慮した対応をしないとクレームがでたりすることがあります。
他の職種に対しては、理学療法士として患者を評価し、その情報や介護方法の注意点、リスクなどについてきちんと報告することが必要です。また、患者の回復にあわせて院内での移動方法や介助方法についてのアドバイスを行なうことで、患者の日常生活能力の向上につなげることができます。また、患者の日々の体調は看護師に確認する必要がありますし、リハビリテーションの大きな方針は医師の指示を仰ぐことが必要です。医師や看護師といい人間関係をつくっておくと、ストレスなく働くことができます。
社交的であれば理学療法士としての活動は大きく広がる
土日や休日には理学療法士協会などが主催する勉強会などがよく行なわれます。勉強会で新しい知識や技術を学ぶのは大事ですが、参加することで他の理学療法士との人脈ができるようになります。良い関係をつくっておくと仕事に関する相談や情報交換ができ、患者の申し送りもスムーズに行なうことができます。
また、論文発表会にて積極的に発表や発言を行なうことや、地域の理学療法士協会の活動などに参加すれば、顔が知られるようになり、協会の仕事を任せられるようになるなどキャリアアップにつながるチャンスは増えていきます。
患者を包み込むような人間的な優しさ
理学療法士には知識や技術だけでなく、人間的な優しさが必要です。多くの患者は急な病気によって体の自由がきかず、後遺症が残る場合もあります。そのため患者は大きな不安をかかえており精神的に苦しい状態にあります。患者の気持ちを理解していないとリハビリテーションはうまく行きません。
最近は高齢な患者が増えており、認知症の患者が多いです。認知症患者に対しては包み込むような優しい対応が患者を安心させます。精神的に穏やかになると身体機能も改善し、問題行動も少なくなります。
治療を途中であきらめない責任感
リハビリテーションを行なってもなかなか効果が出てくれないという経験はすべての理学療法士にあることです。しかし、ここで治療をあきらめてしまうのと、努力して新しいことに挑戦するのかで理学療法士として成長できるかどうかが決まります。一人ひとりの患者の治療に責任を持ち、少しでも患者の生活の質がよくなるように努力する責任感が必要です。
自分自身の健康
職場にもよりますが、多くの職場では休憩が取れないくらいに忙しい場合が多いです。そのため、自分の健康状態がよくないと患者の治療に集中することはできません。また、寝たきりの患者など大きな介助が必要になる場合も多いです。無理な介助で自分の体を壊すことがないように、ある程度の筋力は必要でしょう。
理学療法士に向いている人(適正)と求められる能力:まとめ
私が感じる理学療法士にとって必要な適正と能力を紹介しました。多くのことが求められることに、不安を感じた人もいるかもしれません。これらはあくまでも理想であって、現場の理学療法士も色々なことに悩みながら仕事をしているのが本当のところだろうと思います。
理学療法士にも明るい人やおとなしい人、勉強が好きな人、嫌いな人など、色々な人がいます。個性は大事にするべきですが、仕事として苦手な部分にも積極的に取り組まなければならない場合もあります。学生の時から必要な能力や適正を意識して心がけることで、立派な理学療法士になれると思います。
参考コンテンツ
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