高齢化が進み、医療や福祉の現場で活躍が期待されている理学療法士ですが、理学療法士として働く場合の給与(初任給)は一体どのぐらいなのでしょうか?また理学療法士の将来性についても合わせて知っておきましょう。
- 記事の執筆者:久留米リハビリテーション学院 教務部長 大坪健一
- 記事の監修者:医療法人八女発心会 姫野病院 整形外科医 姫野信吉
理学療法士の給与(給料)は大卒初任給より高い!?
国家試験に合格し、理学療法士として勤務する場合、初任給は一体どのぐらいなのでしょうか?
初任給について、厚生労働省の初任給調べ(2014年版)によると、それぞれの初任給は以下のようになっているそうです。
- 高校卒業:15.8万円
- 高専・短大卒:17.4万円
- 大卒:20.0万円
- 大学院卒:22.8万円
一方で、理学療法士や作業療法士を養成するリハビリ専門学校に寄せられる求人の平均初任給は、23.5万円(本学院調べ)です。
全国の様々な職種の初任給との比較という点と学歴だけで給与が決められるわけではありませんので一概には言えない部分がありますが、それでも、本学院の求人票の平均から見ると、理学療法士の初任給(23.5万円)は、大卒初任給(20.0万円)や大学院卒初任給(22.8万円)を上回っているということが分かります。また、勤務する医療機関にもよりますが、実力のある方は昇給も早いため、若くして、部門のリーダーなどを任せられることもあるでしょう。
理学療法士およびリハビリ業界の将来性
理学療法士という職業の将来性を考える上で、切り離せないキーワードは、「高齢化」と「リハビリ(リハビリテーション)」です。
理学療法士が高齢化社会を支える
※内閣府「平成26年版高齢社会白書」より
では、今後の高齢者の人数や割合はどのように変化していくのでしょうか?
高齢者人口は今後、「団塊の世代」が65歳以上を迎える平成27年(2015年)には、3,395万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる平成37年(2025年)には、3,657万人に達すると見込まれています。ピークは、平成54年(2042年)の3,878万人とされています。これから約30年間、高齢者人口は増加を続けるだろうということが見込まれているわけです。
高齢者の人数が増加することと合わせ、人口に占める高齢者の割合(高齢化率)も上昇を続け、平成47年(2035年)に、33.4%で3人に1人が高齢者、平成72年(2060年)には、39.9%に達し、日本国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる社会の到来が予想されています。
高齢者が増加し、高齢化社会が進行していくと、病気になる人が増え、リハビリを必要とする人が増加することは間違いありません。高齢者が増えることによって、医療費や社会保障費が増加していく問題がそれを表していると言っても間違いではないでしょう。
高齢化社会を迎える日本では、その高齢者を支える理学療法士・作業療法士のニーズは高まることは確実であり、医療の現場で理学療法士・作業療法士が活躍する場面は増えていくでしょう。その点からすると、社会の変化に合った、有望な職種であると言えます。
理学療法士がリハビリを必要とされる方々を支える
また、現在リハビリを受けたいと思っている方は、全国に200万人いると言われていますが、これからは800万人以上の「団塊の世代」がリハビリを必要とする層になる可能性が高まっています。つまり、「団塊の世代」が高齢者となるこれから15~20年間はリハビリを必要とされる方が増加するということです。
一方で現在は、「理学療法士」約12.5万人、「作業療法士」約7.9万人が国家資格を保有し、現場で活躍しているとされていますが、その人数でこれからリハビリを必要とされる方々を支えることはできるのでしょうか?
全国どこの病院に行っても、理学療法士・作業療法士が足りないという声を聞く実状と、リハビリを必要とされる方の人数を考えると、まだまだ理学療法士・作業療法士が必要とされているということが分かるでしょう。
不足している=必要とされている ということですから、理学療法士・作業療法士の活躍の場がなくなることはないでしょう。
理学療法士は、高齢化とリハビリが必要とされる「これからの日本社会」を支える、非常に社会貢献度の高い職業と言えるのではないでしょうか。その点では、理学療法士は将来性が高く、活躍が期待されている貴重な職業であることは間違いありません。