理学療法士の養成学校に通う一番の目的は国家試験に合格することです。そのため、学校を選ぶ際には国家試験合格率や実施している国家試験対策に注目することが重要です。学校を選ぶ際に参考となるように、国家試験の概要と国家試験に強い学校の特徴について説明します。

 

理学療法士国家試験の合格率

過去5年間の理学療法士国家試験合格率は下記の通りです。

年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年度
受験者数 11,129 12,035 12,515 14,379 12,148
合格者数 9,315 9,952 9,272 12,388 9,885
合格率 83.7% 82.7% 74.1% 90.3% 81.4%

理学療法士国家試験合格率は徐々に低下してきている傾向にあり、平成27年度の国家試験では74.1%という低い合格率となりました。国家試験の難易度には年度ごとにバラツキがあるため、確実に合格するためには難しい年度にも対応できる実力を身につけることが必要です。
平成29年度国家試験の合格率は81.4%となっていますが、その内訳は新卒者が87.7%、既卒者が18.5%となっています。現役の方が圧倒的に合格率が高いことは毎年の傾向であり、確実に資格を取得するためには、現役合格することが大切だということが分かるでしょう。

理学療法士国家試験の難易度とボーダーライン

理学療法士国家試験の内容と難易度、試験のボーダーラインについて説明します。

1.理学療法士国家試験の内容

理学療法士国家試験はマークシート方式です。5つある選択肢の中から1つ、または2つを選択します。問題は大きく分けると「一般問題」と「実地問題」に分けられます。

【1.一般問題】

一般問題は主に学校の授業で習うことから出題されます。1問1点で全160問です。
出題分野は解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要及び理学療法 となります。

【2.実地問題】

実地問題では学校の授業で習った内容に加え、実技や実習で学ぶことが出題されます。実際の臨床現場を想定した問題が多いのが特徴で、理学療法に関する技術や患者とのコミュニケーション、疾患ごとの施術方法などが問われる試験となっています。実地問題は1問3点で全40問となります。
出題分野は運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要及び理学療法となります。

国家試験をはじめて見た人はその難易度の高さに驚くことと思います。その理由は国家試験の出題範囲が非常に広く、実際の臨床現場ではほとんど経験しない難病に関する問題が多く出題されるからです。しかし、正しい国家試験対策を行なっていくと、試験を解く要領をつかむことができ、出題されやすい分野があることがわかるようになります。国家試験では過去の傾向から大きくはずれた難問が出題されることもありますが、国家試験対策で出題されやすい分野の問題を確実に正解すれば合格することは可能です。
配点を見ると国家試験では実地問題が重視されていることがわかります。実地問題では単純な知識を問う問題は少なく、疾患や症状に応じた施術方法や患者とのコミュニケーションに関すること問題が多く出題されます。知識を単に暗記するだけでなく、考えて正解を導き出す能力を身につけることが必要です。

2.国家試験の難易度

理学療法士の国家試験はマークシート方式であり、90%前後の合格率があることから国家試験に対して難しいというイメージを持つ人は少ないかも知れません。しかし、一般の人が誰でも受験できる資格試験とは大きく異なります。受験者は全員が養成学校で専門的な知識を学んできた学生であり、そのような学生でも落ちることがある試験であるという認識を持つことが必要です。合格率が低い年には4人に1人が不合格となっていることから油断できない試験であることがわかります。
勉強していない学生がまぐれで国家試験に合格することはまずありません。1年次から理学療法士として必要な知識を身につけ、試験前には十分な国家試験対策を行なうことが必要です。

3.合格のボーダーライン

国家試験の合格基準は合格発表と同時に発表されます。
平成28年度の合格基準は一般問題を1問1点(160点満点)、実地問題を1問3点(120点満点)とし、

  • 総得点:168点以上/280点
  • 実地問題:43点以上/120点

の両方を満たすこととなっています。

例年の傾向から考えると総得点で60%以上、実地問題で36%以上の得点を獲得することが合格のボーダーラインとなります。
合格基準を見ると実地問題が重視されていることがわかります。国家試験対策では実地試験への対策をしっかりと行なうことが必要と言えます。

国家試験合格率が高い学校の特徴

理学療法士になるためには、最終関門である国家試験を必ず突破しなければなりません。そのため、養成学校の国家試験合格率は非常に重要です。国家試験合格率が高い学校の特徴について説明します。

1.4年制の専門学校は国家試験対策が充実している

理学療法士養成課程がある専門学校には3年制と4年制の学校があります。国家試験対策に注目した場合、4年制の方が国家試験対策が充実しています。その理由は3年制の学校はカリキュラムが厳しく国家試験対策にまわす時間が少ないからです。国家試験が行なわれる最終学年には臨床実習や卒業研究、就職活動を合わせて行なわなければなりません。3年制の専門学校では一度授業についていけなくなると追いつくことが難しく留年しやすいという問題があります。
4年制の学校ではカリキュラムに余裕があるため、国家試験対策に十分な時間をとることができます。勉強に遅れた学生でも十分に挽回できる時間的余裕があり、高い国家試験合格率につながっています。

2.大学よりも専門学校

理学療法士養成学校には専門学校の他に大学があります。大学と専門学校を比較した場合、大学の方が国家試験合格率が高いということはありません。むしろ大学の国家試験合格率にはバラツキがみられます。大学は自由に勉強が出来るというメリットがある反面、勉強するかどうかは学生の自主性にまかせている部分があるからです。専門学校では国家試験合格と就職を強く意識した専門的な教育を行っているため、国家試験合格という現実的な目標に向かって努力しやすく、万全な国家試験対策で合格を勝ち取ることが出来ます。
専門学校の中にはコンピューターやタブレットを使用した国家試験対策を行なっている学校があります。タブレットを使用すれば電車などの通学時間や少しの空き時間にも勉強することができるため、効率的に国家試験の勉強を行なうことが出来ます。

3.国家試験対策は少人数制が有利

学校には1クラス80人制の学校と、1クラス40人制の学校があります。80名クラスは大学に多く、一度に大人数の授業が行なえるという反面、教員の目が全体に届かず教育の成果が出にくいという問題があります。40名クラスは専門学校に多く、教員と学生との距離が近く学生と教員とのコミュニケーションがとりやすいため、わからないところを質問したり、実技の細かな指導を受けることが可能です。国家試験対策においても担当教員が近くでサポートしてくれるため、万全の体制で国家試験の勉強を行なうことができます。

4.医療法人による運営か学校法人による運営か

理学療法士養成学校を運営している法人には医療法人と学校法人があります。専門学校は学校法人が運営するのが一般的ですが、理学療法士という仕事は医療に携わる資格であり、資格習得とあわせて医療人としてふさわしい人間性を身につけることが必要となります。医療法人が運営する学校では、その点を十分に認識しているため、医療人に必要な倫理感や協調性、責任感などをあわせて指導してもらうことが出来ます。
また、医療法人運営の学校は医療施設や介護施設を運営していることが多く、実際の施設で早期から職場体験を行なうことが出来ます。他の医療機関や介護施設とのつながりも深いことから、就職活動にも有利です。

最後に

これまで述べてきたように、 理学療法士国家試験の合格率はどこの学校も高い合格だということではありません。卒業試験にパスしなければ国家試験を受験できないのは当然のことですし、学力のないまま本番を受験しても不合格になる確率が高まるからです。

その場合の翌年リベンジしたときの合格率は、20%台になっていますので、いかに在学中に実力を蓄えるかが重要です。

そのためには、1年生からの国家試験対策をしっかり行っているかが大切なポイントです。学校によっては4年生の秋からやれば間に合うという「駆け込み型の試験対策」をしているところもありますが、それは過去通用した手法であって、現在は過去問の記憶に頼る方法は通用しません。

ですので、オープンキャンパスなどで、その学校に「勉強する雰囲気がしっかりあるのか」を肌で感じることが大事なのです。

最後にその学校を見極める簡単な方法をご紹介しましょう。

  • 過去からすべての合格率を開示しているか?
  • 過去不合格になって受験待機している人が何人いるのか?(いわゆる既卒不合格)

なかには40名ぐらい不合格になって待機している学校もあります。その場合の合格率は先ほど述べたように20%台になるわけですから大変苦しいですし、不合格になった卒業生が溜まっているのはその学校の実力と言えるのではないでしょうか?

理学療法士国家試験の概要と、合格率が高い学校の特徴について説明しました。学校を選ぶ際の参考にしてもらえると幸いです。

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