理学療法士は厚生労働省が監修する医療系の国家資格です。リハビリテーションの専門家として医療や介護、スポーツなど幅広い分野で活躍しています。これから理学療法士を目指す人や興味がある人に向けて、理学療法士になるための方法と目指す際に知っておくべき情報を紹介します。

 

理学療法士になるまでの流れ

理学療法士として活躍するためには、以下の3つを満たすことが必要です。

1.理学療法士養成学校への入学

理学療法士の国家試験を受験するためには、理学療法士の養成課程がある専門学校や大学を卒業しなければなりません。大学は4年制、専門学校には3年制と4年制があります。一般入試では筆記試験や面接、小論文によるテストが行なわれるのが一般的です。

近年は入試方法が多様化している傾向にあり、高校推薦や社会人入試、AO入試を行なっている学校も多く見られます。

2.国家試験に合格

養成学校で必要な単位を習得すると卒業見込みと認定され、毎年3月上旬に実施される国家試験を受験することができます。国家試験はマークシート方式となっており、合格することで資格を取得することができます。

3.医療機関や介護施設などの職場に就職

公立の病院や総合病院など規模が大きな医療機関では入社試験が行なわれることが多く、倍率は高い傾向にあります。個人経営の医療機関や介護施設では、面接によって採用が決まるところが多いです。

医療機関や介護施設の中には臨床実習でやってきた学生を積極的に採用しているところが多いため、臨床実習でしっかりと結果を残すことが大事です。

理学療法士学校の種類と選び方

理学療法士の養成学校には主に大学と専門学校があります。専門学校の中には夜間部が併設されている学校があり、働きながら資格取得を目指すことが可能です。大学、専門学校、夜間部それぞれの特徴について説明します。

1.大学

理学療法士養成課程がある大学は平成29年の時点で全国に104校あります。内訳は国公立大学が24校、私立大学が80校となっています。国公立大学は数が少ないだけでなく、募集人員も少ないため入学するのはかなりの難関です。私立大学は学校の数が多く募集定員も多いため、比較的入学しやすい状況です。

大学を卒業すると学士という学位が取得でき、大学院への進学も可能となります。大学では単位制を導入している学校が多く、選択科目で幅広い分野の学習が出来ます。

2.専門学校

専門学校には4年制と3年制の学校があります。平成29年度の時点では、4年制は67校、3年制は85校となっています。
専門学校では、国家試験合格と就職を一番の目的としており、理学療法士の専門分野を集中的に学ぶことができます。大学と比べると少人数制のため、手厚い授業やサポートが受けられるというメリットがあります。

3.夜間部

専門学校の中の36校に夜間部があります。夜間に授業が行われるため、働きながら資格取得を目指すことが出来ます。夜間部の多くは4年制ですが、一部の学校では3年制を導入しています。

学校を選ぶ際のポイント

【3年制学校の特徴】

3年制の専門学校は社会人経験者など、最短で資格取得を目指したい人に向いています。しかし、カリキュラムが詰め込まれていることから、勉強についていけなくなるリスクがあることを忘れてはいけません。

【4年制大学の特徴】

4年制の学校には大学と専門学校があります。大学は幅広い分野の学習をしたいと考えている人や、学位取得を目指す人に向いています。大学は生徒数が多いことから、クラブ活動やサークル活動が盛んに行なわれています。

【4年制専門学校の特徴】

専門学校は理学療法士に必要な実践的な知識や技術を学ぶのに適しています。少数制の学校が多いことから講師との距離が近く、手厚い指導が受けられるというメリットがあります。国家試験対策や就職サポートがしっかりしている学校が多く、効率よく必要な知識や技術を見につけることが出来ます。大学よりも学費が安いというのも大きな魅力です。

【夜間専門学校の特徴】

夜間部は働きながら資格取得を目指す人を対象としています。授業の開始が18時以降となっているところが多く、終了時間は21時を回ります。3年生や4年生になると臨床実習があることから、仕事を続ける場合は職場の理解を得ることが必要になります。

理学療法士の国家資格試験について

養成学校で必要な単位を取得すると、国家試験が受験できます。試験は毎年3月上旬の日曜日に実施され、3月末に合格発表が行なわれます。

1.受験資格

受験資格は理学療法士過程がある養成学校を卒業したもの、または卒業見込みの者となっています。

2.試験内容

試験はマークシート形式となります。出題される問題は、医療関係者として必要な基礎知識を問う一般問題と、専門的な知識を問う実地問題に分けられます。

【一般問題】

解剖学、生理学、運動額、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要及び理学療法

【実地問題】

運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要及び理学療法

3.試験の難易度

合格基準は合格発表後に掲示されますが、最低条件として実地問題の正解が3割以上、全体の正解率が6割以上に満たない場合は、その時点で不合格となります。

国家試験合格率は平成21年までは90%前後を推移していましたが、平成22年には74.3%、平成27年には74.1%となっています。合格率が下がった理由としては、試験の難易度が上がったことと、学校が増えたことによる学生のレベルの低下が考えられます。

決して簡単な試験ではありませんが、養成学校での勉強を一生懸命行なった人であれば確実に合格することが出来る難易度の試験です。

理学療法士の就職先

理学療法士の勤務先は主に病院や診療所などの医療機関、老人保健施設などの介護施設となります。理学療法士として経験を積んだ人の中には、プロスポーツ選手のスポーツトレーナーとして活躍している人もいます。

1.病院

就職先としてもっとも多いのは病院です。総合病院やリハビリテーション病院はもちろんのこと、整形外科や脳神経外科がある病院などで多くの理学療法士が活躍しています。

近年は身体機能が低下した高齢者へのリハビリテーションの需要が高まっており、療養病床がある病院に勤務する理学療法士が増加しています。

2.診療所(クリニック)

診療所は入院設備が19名以下の小規模な医療施設のことを言います。整形外科や脳神経外科を標榜した診療所にリハビリテーション科が併設されていることが多いです。少人数体制の職場が多く、ひとり職場となるケースもあるため、経験がある理学療法士が歓迎される傾向にあります。

近年は、介護保険サービスであるデイケア(通所リハビリテーション)を併設しているクリニックが増加しており、在宅で生活する高齢者への身体能力維持を目的としたリハビリテーションの需要が高まっています。

3.介護施設

介護施設では主に老人保健施設が理学療法士の募集を行なっています。老人保健施設は介護保険施設の一つであり、医療と介護の中間施設といわれています。入所者は医師や看護師による医学的管理を受けながら、生活リハビリテーションを行ないます。今後の介護は在宅介護が中心となることから、施設利用者をリハビリテーションで元気にし、在宅復帰が出来るようにすることが理学療法士の使命となっています。

理学療法士の適正

理学療法士が素晴らしい職業であることは間違いありませんが、人によって向き不向きは当然あります。どのような人が向いているのか、理学療法士の適正について説明します。

1.体力がある

理学療法士は病気の人を元気にするのが仕事です。そのため、自分自身が健康でなければ良いリハビリテーションは提供できません。理学療法士は一日に多くの患者を担当します。身体能力が低下し、大きな介助が必要な患者も多いです。そのため、体力がある人でなければ長く仕事を続けていくことは難しいでしょう。学生時代にスポーツに一生懸命に取り組んだ経験がある人や、日常的にトレーニングを行なっている人に向いている仕事といえます。

2.働きながらも学ぶ向上心

医学や介護の分野は常に進歩しています。そのため、学校で学んだことだけでなく、就職してからも新しいことを学ぼうとする向上心が必要です。時には勉強会や講習会に参加し、新しい知識や技術を学ぶことが求められます。

医療や介護の分野では頻繁に法律改正が行なわれます。理学療法士はリハビリテーションに関連する法律について詳しく知っておくことが必要であり、法律改正にあわせて臨機応変に対応できなければなりません。

3.人と接するのが好き

理学療法士の仕事は、顧客という立場である患者さんにリハビリテーションを提供するサービス業ととらえることもできます。そのため、人と接することが好きで患者さんと上手にコミュニケーションがとれる人は理学療法士に向いています。患者さんとの信頼関係を築くことができれば、効率よくリハビリテーションが行なえるだけでなく、患者さんとのトラブルを回避することが出来るようになります。

理学療法士の仕事は、医師や看護師、介護士、作業療法士など他職種の人と協力して行なうものです。そのため、人と接することが好きで職場内で良い人間関係を築くことが出来る人は良い理学療法士になることができると言えるでしょう。

最後に

理学療法士になる方法と、目指すために必要な内容について説明しました。理学療法士を目指す人の参考になれば幸いです。

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