臨床実習が終了すると就職活動が始まります。就職に関して不安がある学生も多いでしょう。そのような学生のために、理学療法士の就職先や、学校での就職サポート、就職活動で注意すべきポイントなど、就職を目指す際に知っておきたい情報について紹介します。

 

理学療法士になるのは難しい?

理学療法士として働くためには、国家試験に合格し資格を取得することが必要です。過去5年の国家試験の合格率は以下の通りです。

年度 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年 平成29年
合格率 83.7% 82.7% 74.1% 90.3% 81.4%

国家試験の合格率は年度によってばらつきがあります。以前は90%を越えることが多かった合格率ですが、近年はやや低下している傾向にあります。
受験するのは学校で必要な単位を取得し厳しい実習を乗り越えてきた学生であり、そのような学生でも落ちる可能性があることを考えると簡単な試験とは言えません。しかし、学生時代に根気強く勉強し、十分な国家試験対策を行なえば合格することは可能です。

就職を考えた場合、理学療法士国家試験は絶対に失敗出来ない試験です。その理由は、国家試験合格の時期にはすでに就職先が決まっており、不合格となると理学療法士として働くことができないからです。
不合格時の対応は職場によって異なり、リハビリ助手として採用される場合と採用取り消しとなる場合があります。近年は試験の合格発表がはやくなったこともあり、不合格の場合は採用取り消しとなる職場が増えています。せっかく決まった就職が取り消しとならないよう、国家試験への対策は万全にしておくことが重要です。

理学療法士の就職先と施設の種類

理学療法士は幅広い分野で活躍しています。同じ理学療法でも職場によって業務内容は大きくかわります。職場ごとの特徴と仕事内容を理解し、自分の希望に合った就職先を探すことが重要です。

1.病院

最も多くの理学療法士が活躍しているのが病院です。病院といっても種類は非常に多く、公的な医療機関や民間の医療機関、総合病院からリハビリテーション病院まで、あらゆる病院に理学療法士の就職先があります。
理学療法士の対応疾患は非常に広く、整形外科疾患や脳・血管系疾患の患者を中心に、心疾患や呼吸器疾患、生活習慣病など幅広い診療科の患者が治療対象となります。勤務する病院の診療科目によって担当する疾患は大きく異なり、提供する理学療法の内容はかわります。

また、現在では病院ごとに医療の役割分担が行なわれており、「急性期病院」、「回復期病院」、「維持期の病院」に分けることができます。理学療法士の仕事内容はどの病院に就職するかによって大きくかわります。

【急性期病院】

病気を発症したばかりの患者や術後の患者にリハビリテーションを提供します。緊急治療に対応している地域の主幹病院が多く、高いリスク管理が要求されます。理学療法士は早期から患者と関わり、合併症の予防や早期離床早期回復を促します。

【回復期病院】

全身状態が安定した回復段階にある患者に対して集中的な理学療法を提供します。回復期リハビリテーションの実施には回復期リハビリテーション病棟の設置が必要であり、リハビリテーション病院が主な就職先となります。対象疾患は法律によって決められているため、大腿骨頸部骨折や膝・股関節の人工関節治療、脳卒中後遺症患者などに理学療法を行ないます。

【維持期(生活期)の病院】

急性期や回復期を過ぎ障害が固定した患者に対し、身体機能の維持や生活能力の向上を目的としたリハビリテーションを提供します。高齢者向けの医療を提供している病院や療養病床がある病院が主な勤務先となります。入院患者だけでなく、在宅生活を送っている外来患者も治療の対象であり、在宅生活を支えるための理学療法を提供します。
医療保険におけるリハビリテーションには日数制限があり、維持期のリハビリテーションは介護保険で行なうというのが国の方針です。そのため、維持期の病院では介護施設をあわせて運営し、医療と介護が連携したサービスを提供しているところが多いです。理学療法士は介護分野の職員と協力しながら仕事を行います。

2.診療所

診療所は入院設備が19名以下の医療機関のことで、クリニックや医院のことをいいます。就職先として最も多いのは整形外科であり、骨折や靭帯損傷、変形性関節症、リウマチなどの整形外科疾患患者への理学療法を行ないます。入院設備がないところも多く、外来患者へのリハビリテーションが主な仕事になります。
スポーツリハや生活習慣病治療など特定の分野を得意としている医療機関が多く、専門分野を磨くことが出来る職場が多いのが特徴です。

3.介護施設

介護施設では介護老人保健施設やデイケア、訪問看護ステーションが主な就職先となります。

【介護老人保健施設】

介護老人保健施設は介護保険施設の一つであり、医療と介護の中間施設と言われています。介護老人保健施設には法律で定められた人員基準があり、その関係もあって理学療法士の募集が多く行なわれています。
老人保健施設における理学療法士の仕事は、入所者に日常生活動作を中心とした生活リハビリテーションを提供することです。利用者は在宅復帰や他の施設での生活ができるようになることを目的として入所するため、施設における理学療法士の役割は大きく、やりがいがある職場です。

【デイケア】

デイケアは介護保険制度における通所サービスの一つで、正式名称を通所リハビリテーションと言います。在宅生活をしている高齢者に対してリハビリテーションを提供し、身体機能の維持・向上や介護量の軽減を図ります。今後の介護は在宅が中心となると考えられており、デイケアにおける理学療法士への需要は増えることが予想されています。

【訪問看護ステーション】

訪問看護ステーションでは訪問リハビリテーションを行ないます。通院や通所が難しい利用者の自宅に訪問し、身体機能の維持を目的とした運動療法や在宅生活で必要な動作の練習を行ないます。通院が難しい人が対象となるため、寝たきりの高齢者や外出が難しい呼吸器疾患や心疾患の患者などが多いです。

【その他】

その他にもデイサービスや特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどで理学療法士の募集が行なわれています。法的な配置義務がないため求人はあまり多くありませんが、リハビリサービスに力を入れている施設において募集が行なわれています。

学校のサポートを受けて就職先を探そう

社会人経験がない学生にとっては初めての就職活動であり、確実に内定をもらうためには学校側のサポートは重要です。学校で受けられるサポートには以下のようなものがあります。

社会人マナーの指導

就職活動において必要となる社会人マナーを指導します。挨拶や言葉遣い、電話対応、メールの書き方、身だしなみなど細かく指導してくれる学校もあります。
久留米リハビリテーション学院においては、就職担当の教員と担任による個別の就職フォローアップを行なっています。社会人マナーの指導や学生の長所を生かした面接対策など、コーチング型の就職サポートをおこなっています。

先輩や人事担当者による講演会

学校によっては卒業生や企業の人事担当者を招いた講演会を実施しています。先輩が経験した体験談や就職活動を行なうにあたってのアドバイス、就職先が求める人材についてなど、就職活動に役立つ話を聞くことができます。

久留米リハビリテーション学院においても同様のサポートを行なっており、学生が就職に対するモチベーションをあげることにつながっています。

合同就職説明会

採用を行なう病院や施設の関係者が学校に集まり、合同就職説明会が行なわれます。職場で働く理学療法士や採用担当者から直接話を聞くことが出来る貴重な機会であり、働きたいと思える職場に出会える大きなチャンスです。

久留米リハビリテーション学院においては、学院内で「法人内就職説明会」と「西日本地区就職説明会」を行なっています。60以上の施設が参加する大規模な就職説明会であり、学生は興味がある職場の採用担当者から直接話を聞くことができます。

理学療法士として「就職先」を決める際のポイント

初めての就職活動では何を基準にして就職先を選べばよいのか迷う学生も多いでしょう。就職先を探す際のポイントについて説明します。

待遇

待遇というのは給料や勤務時間など、就職先が提示する雇用条件のことを言います。待遇は生活の基盤となるもので、仕事へのモチベーションにも影響します。待遇への不満は仕事をやめる理由にもなるため、働いてから後悔することがないよう、自分が納得できる待遇の職場を選ぶことが大切です。

仕事内容

理学療法士の就職先で説明したように、理学療法士の仕事内容は職場によって大きく異なります。自分がどのような仕事をしたいのか、将来的にどのような理学療法士を目指したいのかを考えて就職先を選びましょう。

キャリアップの機会

職場によっては資格取得や研修会参加を推奨しており、受験費用や参加費用を補助してくれるところがあります。このような職場では関連資格の取得や新たな技術の習得がしやすく、自身のキャリアップにつなげることができます。
職場によっては定期的に勉強会を開催しているところもあります。新しい知識や技術が学べる反面、残業が増えるケースもあるため、自分の希望にあわせた選択が必要です。

理学療法士としての就職を目指す方へのアドバイス

就職活動は臨床実習が終わった頃から始まります。卒業研究や国家試験対策と並行して行なう必要があるため、精神的に負担を感じる人もいるかも知れません。

しかし、最初の就職先は理学療法士としてのキャリアのスタートであり、その後の人生に大きく影響します。自分がどのような職場で働きたいのか、どのような理学療法士になりたいのかをしっかりと見定め、自分にあった職場を探すことが重要です。

興味がある職場に関しては積極的に病院見学を行ないましょう。見学ではどのような人が働いているのか、どのような患者さんが多いのかなど、書類からはわからない実際の職場の雰囲気を感じることができます。複数の職場を見学すれば職場ごとの違いがわかり、本当に働きたいと思える職場が見つかることでしょう。

条件が良い就職先は希望者が多く倍率が高い場合は不採用となることもあります。しかし、就職試験に失敗したことで損をすることはありません。自分には無理だろうとあきらめず、積極的に挑戦して欲しいと思います。
最後まで粘り強く、後悔しない就職活動を行なってください。

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