理学療法士とリハビリ

理学療法士の資格取得を考えている人は、理学療法士がリハビリを行なう職業であることはご存知のことと思います。しかし、リハビリという言葉の正確な意味や、理学療法士が具体的にどのような仕事をしているのか詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。

また、資格取得を検討する際に、同じリハビリの国家資格である作業療法士とどちらを選ぶべきか悩んでいるという人も多いと思います。

ここでは、リハビリという言葉の意味、理学療法士の具体的な仕事内容や活躍できる場所、作業療法士との違いなどについて説明します。

 

理学療法士とリハビリ

1.リハビリという言葉の意味

リハビリというとケガや病気をした人が行なう機能回復訓練をイメージする人が多いと思います。しかし、リハビリという言葉にはもっと広い意味があります。

リハビリという言葉は、re(再び)、habiris(適した)というラテン語に由来しており、リハビリには一度失ってしまった権利を取り戻すという意味があります。そのため、リハビリは機能回復訓練だけを指す言葉ではなく、自立した日常生活が送れるようになることや、趣味やスポーツが再び楽しめるようになること、職場復帰して働けるようになることなど、様々な意味で使用されます。
リハビリの目的は患者によって異なり、患者の年齢や心身機能、障害の程度、今までどのような人生を歩んできたのかによってかわってきます。理学療法士は患者一人ひとりのニーズを的確に把握し、それぞれの患者にとってベストなリハビリを提供します。

2.リハビリの目的は元通りにすることではない

リハビリの理想は全ての患者が完全に回復し、もと通りの生活が送れるようになることですが、実際には後遺症や年齢的な問題で不可能なケースがあります。理学療法士は今の患者にとってベストな目標を模索し、その目標に向かってリハビリのプログラムを考えます。リハビリは必ずしも元通りの状態に戻すということが目標ではなく、今の患者にとってベストな生活が送れるようにすることが重要です。

3.理学療法士はリハビリに欠かせない存在

リハビリは間違った方法で行なうと病状を悪化させる恐れがある他、重大な後遺症が残る原因となります。そのため、リハビリを行なう際には専門家である理学療法士のサポートが必要になります。病気や怪我で体力が低下している患者は1人ではリハビリを行なうことは出来ません。理学療法士は患者を評価し、回復段階に合わせて適切なリハビリを提供することによって、正しい方向に向けた回復を図っていきます。

近年の医療では早期からのリハビリが重要とされており、理学療法士が早くから治療に関わることで患者の身体能力低下を最小限に抑え、早期回復早期離床を図ることが出来ます。早期からのリハビリにはメリットがある反面、病気を悪化させてしまうリスクもあります。病気に関する知識を持ち、リスク管理を行ないながらリハビリが提供できる理学療法士は医療機関において欠かせない存在です。

4.3つのリハビリ国家資格

リハビリに関する国家資格には理学療法士と作業療法士、言語聴覚士の3つがあります。言語聴覚士は言語障害や聴覚障害、嚥下障害などに特化したリハビリを行う資格のため、理学療法士との違いは理解しやすいと思います。しかし、理学療法士と作業療法士には共通した部分が多く、違いがわからないという人も多いです。次の項目では、それぞれの資格の概要と違いについて説明します。

理学療法士と作業療法士の違い

1.理学療法士とはどんな職業?

理学療法士はケガや病気による障害がある人に対して、運動療法と物理療法を用いてリハビリを提供し、自立した生活が送れるようにするのが仕事です。主には関節可動域や筋力などの身体機能の改善や、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)を改善するリハビリを行ないます。

理学療法士という職業について

2.作業療法士とはどんな職業?

作業療法士は身体または精神に障がいのある方に対して、生活していくために必要な動作や社会に適応するための能力の回復をめざします。 治療手段に様々な作業や手工芸を用いるのが特徴です。

3.理学療法士と作業療法士の違い

理学療法士の仕事と作業療法士の仕事には共通していることが多く、明確に仕事内容を区別することは出来ません。実際の職場では理学療法士と作業療法士が協力して患者を担当することが多く、話し合いの中で役割分担を決めることも多いです。

違いをあげるとすると、アプローチの仕方が違います。理学療法士が運動療法と物理療法を用いて機能回復を重視したリハビリを提供するのに対し、作業療法士は日常生活能力の向上につながる作業を通じてリハビリを行ないます。

治療対象となる疾患にも違いがあります。理学療法士の場合は整形外科疾患や脳卒中、心疾患、呼吸器疾患などの患者が治療対象となりますが、作業療法士の場合はその他に統合失調症や認知症などの精神科疾患患者が治療対象となります。そのため、作業療法士は精神科で働くことが出来ます。

実際の職場では、理学療法士が筋力強化やバランス練習などの身体機能を向上させるトレーニングや、基本動作、歩行などの練習を担当し、作業療法士は日常生活動作や巧緻動作の練習を担当することが多いです。しかし、実際には理学療法士と作業療法士の仕事に明確な役割分担はなく、作業療法士が機能訓練を行なうこともありますし、理学療法士が日常生活動作の練習を行うこともあります。

具体的な理学療法士の仕事とは

理学療法士は具体的にどのような仕事を行っているのかについて説明します。

具体的な理学療法士の役割・仕事内容とは

1.関節可動域運動

関節には正常な可動域があり、可動範囲が制限されると日常生活に大きな影響が出ます。肩や肘に大きな可動域制限があると食事をすることも簡単ではありませんし、膝や股関節、足関節に制限が出れば座ることや立つこと、歩くことなどに大きな影響が出ます。理学療法士は関節可動域制限が出ないように予防的に関節を動かしたり、ケガや手術などによる可動域制限を改善するリハビリを行ないます。

2.筋力トレーニング

病気で寝たきりの状態になったり、手術で長期間動かすことができなかった筋肉は急激なスピードで萎縮します。理学療法士は萎縮した筋力を強化し、安全に日常生活が出来るようにリハビリを行ないます。筋力の低下は高齢者の転倒をまねいて寝たきりの原因になったり、関節に負担をかけることで関節変形や痛みの原因となります。理学療法士は筋力を客観的に評価し、低下している筋力の強化を行ないます。

3.基本動作練習

基本動作とは寝返る、起き上がる、座る、立つなどの動作のことを言います。病気で寝たきりだった患者は全身の身体機能が低下しており、これらの動作を行なうのにも専門的なサポートが必要となります。高齢者は基本動作ができるかどうかで寝たきりになるかどうかが決まり、家族の介護負担に大きく影響します。基本動作が出来るようになれば、ベッドからの離床が可能となり、食事や排泄、入浴などの日常生活動作能力も向上するため、患者の生活の質は大きく向上します。

4.歩行練習

患者の能力に合わせて歩行練習を行ないます。平行棒や杖、歩行器などの道具を用いたり、障害物を越える動作や階段を上る動作など応用的な練習も行ないます。歩行が難しい場合には車椅子操作など他の移動手段の練習を行ないます

5.日常生活動作練習

日常生活動作というのは食事、排泄、入浴、移動、整容動作のことを言います。日常生活動作が出来るようになると自分の身の回りのことができるようになり、自宅で自立した生活が出来るようになります。日常生活動作に関しては、作業療法士や看護師などと連携して練習を行なうことが多いです。

6.物理療法

温熱療法や寒冷療法、電気療法、超音波療法など様々な物理療法機器を用いて患者の治療を行います。物理療法には痛みを軽減する効果や筋肉の緊張を緩める効果、炎症をおさえる効果など様々な効果があり、運動療法の前後に行なうことでリハビリ効果を高めることが出来ます。

7.その他

その他にも患者の治療目標にあわせて職場復帰のためのアプローチや、スポーツへ復帰するためのアプローチなども行ないます。必要であれば患者が退院する前に自宅に訪問し、住宅改修や退院後に利用する介護サービスなどについてアドバイスを行なうこともあります。

理学療法士が活躍している分野

理学療法士は幅広い分野で活躍しています。理学療法士が活躍している分野を紹介します。

理学療法士が活躍している分野とは

1.スポーツリハビリ

スポーツ外傷を負った患者に対してリハビリを提供します。スポーツリハビリに力を入れている整形外科やプロスポーツのサポートチームなどが主な職場となります。

2.訪問リハビリ

利用者の自宅に訪問し、リハビリを提供します。寝たきりで通院が難しい人や、自宅環境でのリハビリを希望する人に適したサービスです。今後は在宅介護が増えるため、需要の増加が予想されています。

3.病院

もっとも多くの理学療法士が働いているのが病院です。現在の病院は役割分担が行なわれており、急性期医療、回復期医療、療養医療を提供する病院があります。どの病院に所属するかによって理学療法士の仕事内容はかわってきます。

4.老人保健施設

老人保健施設は介護保険施設の中核施設です。老人保健施設は生活リハビリを行うための施設であり、法的にも理学療法士が必要であることから、多くの理学療法士が働いています。入所者へのリハビリはもちろんのこと、デイケアやショートステイという形で在宅で生活する高齢者へのサポートも行ないます。

参考コンテンツ

最後に

理学療法士が行なうリハビリとはどういうものか、理学療法士と作業療法士の違いなどについて説明しました。今後、理学療法士を目指す人の参考になれば幸いです。

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