現在の医療現場は「チーム医療」によって成り立っています。「チーム医療」とは何か、その中で理学療法士と作業療法士はチーム医療にどのように関わっているのか、ご紹介いたします。

 

チーム医療とは何か

チーム医療というのは、一人の患者に対して複数の医療専門職が連携して治療やケアを行なうことです。医療専門職がそれぞれの専門スキルを発揮することで、患者に対して高いレベルの医療を提供することが出来ます。PTやOTはチーム医療を担う医療専門職の一員です。PTやOTが持つリハビリテーションの知識や技術はチーム医療のあらゆる場面で必要とされています。

チーム医療とは何か

チーム医療導入の背景

従来の医療は医師中心のものであり、医師と他の医療従事者との間には少なからず上下関係がありました。そのことが各職種の主体性を妨げる結果となっていたのです。その様な中で出来たのがチーム医療です。医療従事者間の関係をフラットにし、お互いが連携することで患者に最善の医療を提供します。

チーム医療では患者が中心にあり、その周りを各医療専門職が囲んでサポートを行なう構造になっています。医療の高度化や複雑化もチーム医療導入の大きな理由の一つです。医師ひとりで医療を行うことが不可能となり、業務を分担するチーム医療が普及することとなりました。

チーム医療導入の背景

チーム医療におけるPT、OTの役割

PT、OTはリハビリテーションのスペシャリストとしてチーム医療に関わっています。PT、OTの最終目標はリハビリテーションで患者を元気にして社会復帰させることです。機能訓練室で患者に対してリハビリテーションを提供するのはもちろんのこと、チーム医療では様々なチームに参加し、PT、OTとしての役割を果たします。PTやOTが関わるチームには次のようなものがあります。

  • リハビリテーションチーム
  • 褥瘡管理チーム
  • 緩和ケアチーム
  • 摂食・嚥下チーム
  • 糖尿病チーム
  • 呼吸ケアサポートチーム
  • 感染症対策チーム など

例として、二つのチームにおけるPT、OTの役割を紹介します。

リハビリテーションチームでの役割

コメディカルの語源

リハビリテーションはPTやOTだけが行なうものではありません。実際には医師や看護師、介護士、など多くの職種が協力して行なっています。回復期リハビリテーション病棟では医師や看護師、社会福祉士などの職種が一緒になってリハビリテーション総合実施計画書を作成することが義務付けられています。

PTやOTは機能訓練室や病棟などで患者に対してリハビリテーションを行ないますが、無制限に行なえるものではありません。そこで重要となるのが生活リハビリテーションです。日常生活の中で出来る動作を行なっていくことで身体能力の回復や、日常動作能力の向上、体力の向上などを図っていきます。

生活リハビリテーションを実際に行うのは看護師や介護士の仕事です。ベッドから起きている時間を増やす、移動の際には出来るだけ歩いてもらうようにするなどの方法で患者の回復を促進します。PTやOTは患者の能力や行うべきことを看護師や介護士にフィードバックすることで、効率的な生活リハビリテーションが可能になり患者の早期回復につながります。

褥瘡管理チームでの役割

褥瘡というのは床ずれのことです。医療に関わっていない人は床ずれは大きな問題ではないと感じるかもしれません。褥瘡は悪化すると皮膚が壊死し、感染症で死に至るケースもあります。また、悪化すると完治が難しく患者に大きな苦痛を与えることになります。そのため、褥瘡管理は医師や看護師、介護士、PT、OTなどを中心としたチームでケアを行ないます。PTやOTは除圧のために使用するマットや福祉用具の選定・調整に関わり、褥瘡が悪化することがないようにサポートします。

また、PTやOTは寝たきりで褥瘡のリスクが高い患者に対しては早期から関わり、寝返りや座位保持ができるよう練習を行なっていきます。早期離床は褥瘡予防する上で非常に重要です。看護師や介護士に体位変換やポジショニングのアドバイスを行なうこともあります。

他のチームでも同じようにPT・OTは大きな役割を果たしています。

チーム医療で重要なこと

チームの中における自分の役割をきちんと理解し、その役割をきちんと果たすことが大事です。また医療従事者間の連携を図ることが重要です。職種間に壁があるようでは患者に最善のチーム医療を提供することは出来ないでしょう。

医療従事者間でいい関係を作るためには、お互いの信頼関係が必要です。そのためには互いの職種の専門性や仕事内容を理解し、敬意をはらうことが必要です。PT・OTの仕事が奥が深く難しいものであるように、他の職種も高い専門性が必要な仕事です。お互いを知ることで本当の意味での連携が取れるようになり、最高のチーム医療が提供できるようになるでしょう。

チーム医療で重要なこと

チーム医療の今後

がん治療へのチーム医療の導入

がんは検査や治療技術の発達で助かるケースが増えてきました。しかし、死因の1位ががんであることはかわっていません。がん治療は長期にわたることが多く、身体的なケアだけでなく、精神的なケアが必要になります。抗がん剤や放射線治療による副作用も大きな問題です。トイレに自分で行ける能力をリハビリテーションで維持することは、尊厳にかかわる重要なことがらです。

PT・OTががん患者に対してリハビリテーションを行なう機会は今後増えていきます。チームの一員としてどのような役割を果たさなければならないのか学習しておくことが重要です。

在宅医療へのチーム医療の導入

これからは在宅医療を希望する患者が増えていきます。PT・OTは訪問リハビリテーションという形で在宅医療にかかわります。訪問診療や訪問看護、訪問介護と連携してチーム医療を提供する機会は増えていくでしょう。
【監修:医療法人八女発心会 姫野病院 理事長 姫野信吉】

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