治療を行なう仕事として多くの人が思い浮かべるのは医師でしょう。しかし、医療の現場で治療を行っているのは医師だけではありません。

ここでは理学療法士と治療との関係や治療対象、治療方法について説明します。

理学療法士は治療をする?

治療というのは病気である人に対して行なう症状を回復させたり、悪化することを予防する行為のことを言います。理学療法士はリハビリテーションによって患者の身体機能を回復させたり、維持させることによって長く元気に生活出来るようにすることが仕事であることから、理学療法士が行なっていることは間違いなく治療ということが出来るでしょう。

理学療法士協会では理学療法のことを「けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法 」と説明しています。理学療法士は理学療法という治療法を使い、患者に治療を提供するのが仕事です。

理学療法士が治療の対象にするのはどんな人?

理学療法の治療対象となるのは簡単に言うと運動機能が低下した人です。病気やけがが原因のものや、加齢や手術が原因のものもあります。具体的な疾患には以下のようなものがあります。

①中枢神経疾患

脳と脊髄のことを中枢神経と言い、これらが障害される病気を中枢神経疾患といいます。中枢神経は感情や認知能力、運動機能、感覚など多くの機能の中核を担っており、一度障害されると回復しないため重度な後遺症が残る場合が多いです。脳梗塞や脳出血では、前日まで元気に生活していた人が一変して重度な後遺症を持つことになるため、精神的なケアを含めたリハビリテーションが必要となります。

中枢神経疾患は完治することが難しい疾患が多いことから、理学療法士は急性期から維持期まで長期にわたって関わります。中枢神経疾患には脳卒中の他にも脊髄損傷やパーキンソン病、脳外傷、脳腫瘍、小児の発達障害などがあります。

②整形外科疾患

整形外科疾患は筋肉や骨、関節などの運動器の病気が中心なため、理学療法の対象疾患が非常に多いです。手足や脊椎の骨折、腰痛、肩関節周囲炎、変形性関節症といった病気は患者数が多く、臨床で頻繁にみかける疾患です。高齢者の場合は加齢による関節変性が原因の病気や転倒による骨折が多く、若い人の場合はスポーツや交通事故による外傷が多いのが特徴です。

③呼吸器疾患・心疾患

呼吸器疾患では慢性閉塞性呼吸器疾患や肺炎、心疾患では心筋梗塞や狭心症の患者が理学療法士の治療対象となります。肺や心臓の病気は運動により病状が急変する可能性が高く、医師と連携をとりながら高いリスク管理の下でリハビリテーションを行なう必要があります。

④内科的疾患・体力低下

理学療法士が担当する内科的疾患で最も多いのは糖尿病です。糖尿病の治療は薬物治療、食事療法、運動療法の3本柱で行なうのが基本です。理学療法士は運動療法を担当し、適切な運動習慣を身につけられるよう指導を行ないます。糖尿病は内服薬やインスリンによって血糖値を管理しているため、つねに低血糖の危険があります。その点のリスクを把握しながら慎重に運動療法を提供します。

体力低下は高齢が原因によるものと手術によるものがあります。体力が大きく低下すると患者は1人で動くことは難しく、そのままにしておくと寝たきりになってしまう可能性が高いです。理学療法士は出来るだけ早くから介入し、患者の体力が回復するよう理学療法を提供します。

理学療法士が行う治療方法

理学療法士がどのような人に治療を行うのかについては理解していただけたと思います。次は、理学療法士がどのような方法で治療をおこなうのかについて説明します。理学療法士が用いる治療法は大きく分けて3つです。

①運動療法

運動によって身体機能を回復させる治療法です。具体的には筋力トレーニングや関節可動域運動、バランス訓練、歩行練習などを行ないます。疾患ごとに標準的な治療法は存在しますが、実際には同じ疾患でも患者によって症状は全く違います。理学療法士は患者一人ひとりを総合的に評価し、それぞれに最適な運動療法を提供します。

②物理療法

物理療法は身体に物理エネルギーを与えることで生理的な化学変化を起こし、血流の改善や痛みの軽減、筋緊張の緩和などを目的として行なう治療法です。関節痛など軽度な症状の患者に対しては物理療法だけが行なわれることもありますが、基本的には運動療法とセットで行なわれます。

物理療法を最初に行なうことで運動療法による治療効果を高めたり、運動後に行なうことで炎症をおさえたり、疲労を回復する効果が期待できます。

物理療法にはホットパックによる温熱療法や低周波治療器による電気療法、アイスパックによる寒冷療法、頸部や腰部を引っ張る牽引療法などたくさんの治療法が存在します。

③日常生活活動(ADL)訓練

日常生活活動は日常生活を営む上で不可欠な基本的な動作のことを言います。英語でactivities of daily living と言い、医療や福祉の現場では略してADLと言います。ADLは食事・排泄・入浴・更衣・整容・移動に分けることができます。 

筋力や関節可動域など身体機能を回復しても、実際の生活に必要な動作が出来ないのでは自立した生活を行うことはできません。日常生活に介護が必要になるかどうかはADL能力によって決まると言っても過言ではなく、ADLが自立できるかどうかは介護する家族にとっても重要です。ADL訓練は結果が重視される治療ということが出来るでしょう。ADLが出来るようになるかは周囲の環境も重要で、必要であれば福祉用具の使用や住宅改修のアドバイスなども行ないます。

ADL練習に関しては作業療法士と治療内容が共通することが多いです。作業療法士と一緒に担当している場合には、理学療法士が移動を担当し、作業療法士が他の練習を担当するなど役割分担を行なうこともあります。

最後に

理学療法士は患者の治療に大きく関わっており、理学療法士が提供するリハビリテーションによって患者の回復具合は大きくかわります。理学療法士は責任がある仕事ですが、良い治療を提供することによって患者を元気にすることが出来るやりがいのある仕事です。良い治療を提供し患者から感謝されるような理学療法士になってほしいと思います。

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この記事を書いた現役の理学療法士は・・・

理学療法士 7年目(33歳・男)

大学卒業後、一般企業に就職し社会人を経験。その後理学療法士を目指して4年制のリハビリ専門学校へ入学。病院・介護老人保健施設・デイケアで働く経験を持つ現役の理学療法士。

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