理学療法士が訪問リハビリで働くために

理学療法士が携わる訪問リハビリとは?

私が携わっている訪問リハビリとは、利用者様のご自宅へ直接訪問し、リハビリを行う仕事です。医療費削減や早期の生活訓練の必要性から、訪問リハビリの社会的な注目度は高く、今後ますます必要とされてくる分野です。そして、訪問リハビリとは今や、急性期から慢性期までのすべての病期を扱い、病院内から地域、社会に介入様式を広げた、究極の“総合”分野と言えます。

就職を考え、求人票を眺めて気づいた方もいらっしゃるかもしれません。

訪問リハビリの求人(訪問看護ステーション等の事業所や、病院の地域医療部署など)の多くが『2~5年の臨床経験要』という条件を提示しています。そのため、訪問リハビリの現場を、学生の皆さんがすぐさま目指すことは少ないかもしれません。

しかし、もしも将来訪問リハビリを目指すこととなった場合、一年次からのカリキュラムがすべて大事となってきます。

多様な状況に対峙する、訪問リハビリの現場

訪問事業所でのリハビリの現場は、現状、学生のための実習地とはほとんどなりません。そのため、私が訪問リハビリに携わってから、その具体的な業務内容を学生の方に語るのは、これが初めてかもしれません。

例として、ある日の午前の出来事を挙げてみましょう。

AM9:00、脊髄小脳変性症・男性のお宅

早朝、ソファーから立ち上がる時に今週3度目の転倒があった、との報告あり。寝起きの血圧が低めとのこと。「頭のてっぺんが冷たい感じがする」と。

最近、降圧剤の変更があったことを看護師の記録で確認。すぐに主治医へ状態報告。同時にケアマネージャーへ連絡し、午後からのデイサービスへ情報提供。リハビリ後、部屋の環境再評価。ソファーはお気に入りのものであるため変更は見送り、福祉用具の『ベストポジションバー』を導入提案。

AM10:00時半、右上腕骨骨折・女性のお宅

骨折受傷後、保存治療を行っていた病院でトラブルがあり早期退院した経緯から病期が浅い。炎症管理、関節可動域訓練を実施。また、患部の冷却方法の指導と、患部外のセルフエクササイズの指導も合わせて行う。ご本人の忘れを心配し、ご家族へセルフエクササイズ内容の伝言を残す。

AM11:30、すい臓癌末期・男性のお宅

到着時、ベッド上で心肺停止状態。ご本人・ご家族は救急処置を望まれていなかったため、訪問看護師・往診医に連絡。数十分後に往診医が死亡確認。エンゼルケア(死後の処置)のお手伝いをさせていただく。

 

このように訪問リハビリでは、様々な疾患を持った、様々な病状の対象者に出会います。在宅での生活背景をベースに介入するため、ご本人やご家族の主体性が最優先されます。また、介入者は多事業所・多職種にわたるため、お互いの立場や専門性を十分理解した上での連携が求められます。

在学中のすべてのカリキュラムを総動員する必要がある

訪問リハビリで必要な情報や技術を、1年生~4年生のカリキュラムにあてはめてみましょう。

上記にご紹介したある日の午前中だけでも、基礎医学・評価学・治療学・地域リハビリテーション学の認識を前提に、対象者の主体性を大事にするために臨床心理学を、動作を生活場面に当てはめるために日常生活活動学を、病状の理解のために内科学・整形外科学を、いつの間にか活用していたことに気づきます。必要な知識や技術が多くの科目をまたいでいるため、時に、複数の分野の常識が拮抗し優先順位の判断が難しくなることも多くあります。

一年次から、すべての授業を大切に!

一年次から、その科目の全体の流れや、出来るだけ多くの用語と定義を頭に入れていったほうが、卒業後にしっかりとした知識整理・理解が得られやすくなります。

もちろん、私もまだまだ修行中の身であり、すべての知識を使いこなせているわけで到底ありません。臨床家のなかには、リハビリの取り扱い範囲の広大さを目の当たりにして途方に暮れ、「学校の知識なんて臨床に役に立たない」とか「机上の勉強にとらわれて頭でっかちにならないほうがいい」といったことを言う人達もいます。しかしこれは、基礎知識を動作や生活場面に転用することが出来ていないからこその発言なのではないでしょうか。知識や技術の知見に深みが無いまま、慣れによって無難に現場で仕事をこなせていても、目の前の利用者さんは一向に満足を得られません。

困った時に助け合う学生時代の仲間を大切に!

ここまで、訪問リハビリの現場で働くにあたって、いかにも自分は、個人的な知識や技術、判断力のみで対処して働いているかのようなご説明をしてきました。しかし実際は、学生時代の同期や先輩に多くを助けられているということを、付け加えなくてはなりません。日本全国の様々な特色をもつリハビリ現場で働いている、苦楽を共にした仲間の中に、必ず自分が探している答えを知っている人がいるはずだ、と信頼してまず間違いは無いと思います。

学生生活4年間、仲間と一緒に、学びの時間を大切にしていただきたいと思います。

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この記事を書いた現役の理学療法士は・・・

理学療法士 10年目(35歳・女)

高校卒業後、塾講師などのアルバイトを経験してから4年制のリハビリ専門学校へ入学。卒業後、病院が展開する訪問リハビリを中心に携わり、現場での勤務の傍ら、研究活動にも励み、学会でも積極的に発表の機会を得ている。

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