リハビリとは?リハビリの専門家を目指すなら知っておきたいリハビリの基本

理学療法士や作業療法士はリハビリを行なうのが仕事です。リハビリという言葉は略語であり、正式にはリハビリテーションと言います。

理学療法士や作業療法士はリハビリの専門家としてリハビリテーションの言葉の意味や目的をしっかりと理解しておく必要があります。ここでは、リハビリテーションの定義や目的などについて詳しく説明します。

 

リハビリテーションの意味を簡単に言うと?

多くの方はリハビリテーションのことを「病気や怪我をした人が元気になるために行なう機能訓練」のようなものとして認識しているのではないでしょうか。この認識は間違いではありませんが、リハビリテーションという言葉にはもっと広い意味が含まれています。

リハビリテーションは「なんらかの理由によって能力が低下した人が本来のあるべき状態になるために行なわれるすべてのこと」を指した言葉であり、機能訓練だけでなく、職場復帰に向けた職業訓練や、住宅改修などの環境整備、介護保険サービスなどの社会資源の活用などもリハビリテーションに含まれます。

リハビリテーションという言葉に対して「元の状態に戻す」といったイメージを持っている人は多いと思いますが、実際の医療現場では後遺症などにより元の状態に戻ることが難しいケースが多いです。近年では「リハビリテーション=元の状態に戻すこと」ではなく、「今のその人にあった生活を獲得すること」と考えるように変わってきています。

リハビリテーションの語源は?

リハビリテーションの語源はラテン語であり、re(再び)とhabilis(適した)という二つの言葉が合わさったものです。つまり、リハビリテーションのもともとの意味は「再び適した状態に戻すこと」ということになります。

そのため、リハビリテーションは医学の分野に限られた言葉ではなく、職業訓練学校などで就労のために行なわれる訓練や、養護学校や特殊学級における教育、少年院や刑務所における犯罪者の更正などに対してもリハビリテーションという言葉が使用されます。

リハビリテーションの定義

リハビリテーションという言葉は複数の組織や公文書によって定義されています。代表的なものは以下の通りです。

①WHO(世界保健機構)による定義

リハビリテーションは、能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。

リハビリテーションは障害者が環境に適応するための訓練を行うばかりでなく、障害者の社会的統合を促す全体として環境や社会に手を加えることも目的とする。

そして、障害者自身・家族・そして彼らの住んでいる地域社会が、リハビリテーションに関するサービスの計画と実行に関わり合わなければならない。

②国際障害者世界行動計画による定義(1982年)

リハビリテーションとは、身体的、精神的、かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることによって、各個人がみずからの人生を変革していくための手段を提供していくことをめざし、かつ時間を限定したプロセスである。

③80年代憲章(国際障害者リハビリテーション協会)による定義

リハビリテーションとは、障害を持った個人を援助し、可能な限りその機能を発揮させるように、そして社会の中にインテグレート(統合)させるように、医学的・社会的・教育的・職業的な各手段を組み合わせて実行する過程である。

④ 地域リハビリテーション支援活動マニュアルの定義 (1999年)

リハビリテーションとは医療保険・介護保険でのサービスのひとつであるとともに、技術であり、ひとつの思想でもあります。また、リハビリテーションは、医学、教育、職業、社会など、きわめて多角的なアプローチを必要としています。さらにリハビリテーションとはなによりも人権の問題であり、本来人権をもたない障害者に国や社会が恩恵・慈悲として人権を付与するものではありません。人が生まれながらにしてもっている人権が、本人の障害と社会制度や慣習・偏見などによって失われた状態から、本来のあるべき姿に回復させるのがリハビリテーションです。

紹介した定義の内容はそれぞれで多少異なりますが、リハビリテーションを広い概念としてとらえているという点では共通しています。医療現場で働いているものとしては④の定義がもっとも現状にあった内容に感じます。公文書に書かれた定義であることから、厚生労働省のリハビリテーションに対する認識も同じだと言えるでしょう。

リハビリテーションの目的

リハビリテーションの目的は患者によって異なります。医療現場では患者の疾患や身体機能が関係するのはもちろんのこと、年齢や性別、生活環境、患者の希望などあらゆる面を考慮して目的を設定します。近年は超高齢化社会ということもあり、社会情勢を考慮した目標設定も必要とされるようになっています。具体的なリハビリテーションの目的には以下のようなものがあります。

①患者の身体機能の回復

病気や怪我によって低下した患者の身体機能を回復します。具体的には筋力強化や関節可動域の改善、麻痺の促通、感覚機能の改善などを行ないます。

②日常生活動作能力の改善

自立した生活が送れるようになるためには食事や排泄、入浴、整容、移動などの日常生活動作が自分で行なえなければなりません。リハビリテーションでは日常生活動作練習を行い、これらの動作が自立できるようにアプローチします。可能な場合には掃除や洗濯といった家事動作の練習や、外出して買い物や公共交通機関を利用する練習も行ないます。

③患者の社会復帰

患者が若い場合には職場に復帰し再び働くことが出来るようにアプローチしなければなりません。障害前と同じように仕事が行えることが理想ですが、難しい場合には職場内での配置転換を提案することもあります。

高齢者に対しては地域に住む人々と触れ合いながら充実した社会生活を送ることができるよう、住宅改修や介護保険サービスなどの社会資源の利用も含めたアプローチを行ないます。

④介護予防

超高齢化社会で重要なことは介護予防によって元気な高齢者を増やすことです。介護保険で提供されるデイサービスやデイケアといったサービスは介護予防に重点を置いたサービスとなっており、高齢者の身体機能を維持することで家族の介護負担を軽減し、高齢者が自宅での生活を長く続けることが出来ます。

⑤患者の早期離床早期回復

日本では医療費の高騰が大きな社会問題になっており、国の方針によって医療機関は患者の入院期間を短縮させなければなりません。入院期間短縮のためには患者の早期離床早期回復が必要で、その手段としてリハビリテーションが行なわれます。近年は安静期間を極力短くし、早期から積極的にリハビリテーションを始めるのが標準的な医療となっています。

説明した以外にもリハビリテーションの目的はたくさんあります。担当する患者や職場によって目的は大きくかわるため、セラピストには状況に合わせた臨機応変な対応が求められます。

リハビリテーションの種類

医療や介護分野で治療として提供されているリハビリテーションには主に以下の3種類があります。

①理学療法

病気や怪我、高齢、障害などによって身体機能が低下した人に対して運動療法や物理療法による治療を提供します。運動療法は運動による治療アプローチのことであり、筋力強化や関節可動域の改善、バランス練習、歩行練習などがあります。物理療法は温熱や電気、水、光線などの物理的な手段を用いた治療法であり、専用の機器を用いて痛みや血流の改善、筋緊張の緩和などを行ないます。

②作業療法

身体または精神に障害がある人に対して作業を通じたリハビリテーションを提供します。理学療法が身体機能の回復に重点を置いているのに対し、作業療法では食事や排泄、入浴など日常生活動作の回復に重点が置かれています。治療には手工芸や積み木、パズルなど様々な作業が用いられます。作業療法では精神面へのアプローチが可能であり、精神科病院や認知症施設などに多くの需要があります。

③言語聴覚療法

言語聴覚療法は「話す」「聴く」「食べる」の機能に障害がある患者に対してリハビリテーションを提供します。失語症や高次脳機能障害、言語発達遅滞などの患者に対するコミュニケーション訓練を行なったり、構音障害がある患者に対して発声練習などを行ないます。また、食事に障害がある患者に関わり、食べ物が肺に入って起こる誤嚥性肺炎や窒息などを予防し、安全な食事が出来るようになる為のアプローチを行ないます。

リハビリテーションに関する仕事

リハビリテーションに関わる仕事には以下のようなものがあります。

①理学療法士

厚生労働省が認定を行なうリハビリテーションの国家資格です。理学療法を使ったリハビリテーションを提供します。養成学校を卒業し国家試験に合格することで取得することが可能です。養成学校には専門学校(3年制と4年制)と大学(4年制)があります。

②作業療法士

厚生労働省が認定を行なうリハビリテーションの国家資格です。作業療法を使ったリハビリテーションを提供します。取得までの流れは理学療法士と同じです。多くの職場では理学療法士と協力して仕事を行います。

③言語聴覚士

理学療法士や作業療法士と同じ厚生労働省が認定を行なうリハビリテーションの国家資格です。言語聴覚療法を使ったリハビリテーションを提供します。資格取得までの流れは理学療法士や作業療法士と同じです。現状では理学療法士や作業療法士と比較して数は少ないですが、脳卒中による後遺症や高齢者の増加により需要は増加しています。

④臨床心理士

臨床心理士は臨床心理学に基づいた知識や技術を用いて患者の心へのアプローチを行ないます。患者は重度な障害を負ったことにより精神に大きなダメージを抱えています。臨床心理士は患者の話に耳を傾け、適切なカウンセリングによって患者の生きる気力を回復させていくのが仕事です。臨床心理士は「日本臨床心理士資格認定協会」が認定を行なう民間資格になります。

⑤その他

医療や介護の現場ではリハビリテーションの指示を出す医師はもちろんのこと、生活リハビリテーションという形で様々な職種がリハビリテーションに関わっています。看護師や介護士はケアや介護を提供するにあたり、利用者の能力を把握して患者に出来ることは自分で行なってもらうようにしています。出来ることを自分で行なうことは体力の回復や日常生活動作能力の向上につながります。

管理栄養士は食事の面でリハビリテーションと関わっており、栄養面や食事環境、食事形態などを調整することで患者が安全に食事を行なえるようにしています。

最後に

リハビリテーションという言葉には広い意味があることを認識していただけたと思います。理学療法士や作業療法士を志す方にはリハビリテーションの言葉と同じように、患者に対して幅広いサポートが行なえるよう、必要な知識や技術の習得に努めて欲しいと思います。

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