近頃、「理学療法士が余っている」という話を聞いたことがありませんか?

これは根拠のない噂話ではありません。しかし、余っているからもう理学療法士は必要ないのかというと、決してそんなことはありません。理学療法士の置かれた状況について、正しく理解をしていきましょう。

これから理学療法士を目指そうと考えている方にとっても、とても大切な情報となります。

理学療法士は飽和状態なのか

理学療法士が飽和状態と言われる理由を以下にいくつか挙げてみましょう。

養成校が急増した

理学療法士国家試験の受験資格を得るためには、大学・専門学校などの養成校を卒業することが絶対条件となります。理学療法士の養成校は、規制緩和が行われた平成11年頃からが急速に増えました。平成11年からの10年間で入学定員が1万人ほど増えています。その結果、国家試験の受験者数も増え、理学療法士の人数も増えていると言えます。

試験の難易度が低く目指しやすい

理学療法士の国家試験は、医療系の国家試験の中では、合格率が高い試験です。同じリハビリ専門職である作業療法士や言語聴覚士と比べても、理学療法士の合格率は特に高い傾向にあります。そのため、養成校を卒業できさえすれば資格を手に入れられる可能性が非常に高く、「手に職をつけたい」というニーズに応えてきたという側面があります。

各施設(病院など)に最低限必要な人数が少ない

医療機関における理学療法士の人数は、病院の規模や算定する加算によって異なります。大きな規模のリハビリテーション病院では、数多くの理学療法士などのリハビリ職を抱えていますが、病院数自体が決して多くはありません。現在も一人職場や数人の規模で働く理学療法士が多いとされています。

そのような規模の病院や介護施設ではそうそう増員することはできませんから、退職などで欠員が出たときにしか求人が出にくい状況です。どんなところでも仕事が見つかる、というわけではありません。

求人倍率

理学療法士の就職先としては、病院などの医療機関が一般的でした。しかし現在は新卒でも介護保険の施設を選ぶ学生が増えているといいます。理学療法士の働き方の変化によるものと言えます。

離職が少ない

理学療法士の就職先は今でも病院が大部分を占めています。病院の倒産もないことではありませんが、世間の一般企業に比べれば、雇用環境の安定性は高いと言えます。医療機関で働く理学療法士は離職率も低い傾向にあります。

「飽和状態」ではどんなことが起きるのか?

理学療法士だけでなく、一般的に有資格者が飽和状態にあると、どのようなことが起こるかを考えてみましょう。

就職先が見つかりにくい

当然ながら、求人に対して仕事を探す人の数が多くなり、競争率が高くなります。人口が多いほど病院や介護施設などの働き口が多いため、人口の少ない地方では就職先の数がさらに少なく、競争が激しくなる可能性があります。

給与水準が下がっていく

就職先と同じく、需要と供給の原理が働きます。現在の飲食業など人手不足の業種の給料が上昇傾向にあるのと同じく、人が余っていれば給与水準は下がってしまいます。

業務の専門性が脅かされる

理学療法士に限らず、資格を持って仕事をする人は、本来はその仕事に専念すべきですが、人が余っている状況であればそれも揺らいでしまいます。介護施設の求人には、「介護業務」や「送迎」など、本来の理学療法士の業務ではないことも仕事に含まれることが明記された求人もあります。

理学療法士が飽和状態にあるとき、必要とされる能力とは

理学療法士として必要な能力はいつの時代も変わりはありません。理学療法士として患者さん、利用者さんが今よりもよい状態になるお手伝いができることがなにより大事です。そのためには知識と経験が必要ですし、常に新しい知識を取り入れていく貪欲さも求められます。

理学療法士の分野は多方面にありますから、「この分野なら誰にも負けない!」というレベルを目指しましょう。

そして、一社会人として欠かせないマナーや社会常識についても、今まで以上にしっかりと身につけていく必要があると言えます。

実際の理学療法士が働く現場では

筆者も現役の理学療法士ですが、実際に働く現場で飽和感があるかというと、そこまで強く感じてはいません。理学療法士が飽和状態というのは、以前があまりにも希少価値があって就職面接すらせずに合格できる時代からの比較から言われていることだと考えます。

その証拠に専門学校などへの求人は全国的に見れば一人で数十件も求人が来ているようです。インターネットで調べてみても求人は全国にたくさんあります。また就職サイトに登録することも可能です。日本中どこでも仕事ができるのが理学療法士の強みであることも今も変わりません。

世間一般の企業への就職(国家資格者ではない)の場合と比べると圧倒的に恵まれた環境ですし、勤務時間も定時で帰宅できる場合がほとんどです。

上を見ればキリがないですが、飽和状態という表現は、理学療法士を増やしたくないという既得権益を守りたい方々の意見ではないかと感じています。

ただ、新人の理学療法士の話を聞くと、「できれば地元の病院で働きたかったが、病院だと求人が少なく、介護施設を選びました」というような話を聞くようになりました。一部においては、勤務先の種類や勤務地などの条件が重なると、就職先を見つけることが難しくなっているかもしれません。

ブラック化はしにくい仕組み

理学療法士は、医療機関であれば、リハビリを行うことで得られる単位数の上限が決まっています。また介護保険の施設では「専従要件」といって、理学療法士以外の業務ができない決まりがある場合が多いです。そのため、朝から晩まで仕事が続く、というようなブラック企業のような状態にはなりにくいと言えます。

これから理学療法士を目指す方へ

競争が激しいというのは、決してマイナスなことばかりではありません。質の高い理学療法士でなければいけないという意識が高まることで、理学療法士全体のレベルアップにつながっていくことが期待できます。また、理学療法士の資格を持ち、それをさらに別の仕事に活かしていくなど柔軟な働き方ができるようになります。

今、理学療法士になりたい、と考えているみなさんに質問です。どんな理学療法士になりたいですか?

人それぞれに目標があって、目指すイメージはひとつではないと思います。しかし、適当な仕事をする理学療法士にはなりたくないですよね。きちんと責任を持って仕事のできる理学療法士であれば、必ず活躍できる舞台があります。

医療・介護の分野に限らず、介護予防やフィットネス、さらには自費サービスなど、理学療法士の活躍できる領域はどんどん広がりつつあります。これから理学療法士を目指して進学される皆さんはが卒業する頃には、また新しい分野が開拓されているかもしれませんね。ぜひ新しいフィールドにも積極的に羽ばたいていける理学療法士を目指してください。

理学療法士・作業療法士を目指す方はこちらも参考になります

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この記事を書いた現役の理学療法士は・・・

理学療法士 7年目(33歳・男)

大学卒業後、一般企業に就職し社会人を経験。その後理学療法士を目指して4年制のリハビリ専門学校へ入学。病院・介護老人保健施設・デイケアで働く経験を持つ現役の理学療法士。

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