AI技術の進歩は目覚しく、スマホの音声機能やネット接続された家電をAIで管理する技術などは実用的なレベルにまで達しています。

理学療法士や作業療法士が働く医療・福祉の分野は医療費削減や人材不足解消のため、AIによる作業の効率化が期待されている分野です。医療・福祉分野のAI技術の研究は世界中で行なわれており、その中にはリハビリに関する研究も多くあります。

ここでは進化しているAI技術の現状と、AI技術が導入されることでリハビリはどのように変わっていくのかについて説明します。

AI(人口知能)と医療の今

医療分野へのAI技術の導入はすでに始まっており、最先端の医療機器にはAIが医師の診断を補助するような機能が搭載されています。CTやMRIといった高度な医療機器はコンピューター管理されており、AIは蓄積されたデータをもとに撮影した画像の分析や診断を行います。現状では医師の診断の補助として用いられているレベルですが、がんや脳動脈瘤、認知症を発見するAIはすでに論文として発表されており、近いうちに実用化される可能性があります。

リハビリ分野ではVR(仮想現実)技術を用いた脳卒中後遺症患者へのトレーニングや、コミュニケーションロボットを使用した認知症予防、ネット動画でどこでも自主的なリハビリが行えるシステムなどが開発されています。

VR技術はプレイステーションなどのゲームとしてすでに一般流通されており、実用レベルに達しています。専用のゴーグルとセンサーを用いることでゲーム感覚でリハビリが行えます。麻痺がある患者のリハビリに活用した研究では、有意なトレーニング効果がみられたという報告もあります。

コミュニケーションロボットはソフトバンクのペッパーを中心として、すでに導入している施設がみられます。利用者とのコミュニケーション用として使用されていることがほとんどですが、認知症予防や発達障害のこどもへのプログラミング教育、失語症患者への言語訓練などに使用されている例もあります。

株式会社LOCUS は脳梗塞患者へリハビリプログラム動画を使ってリハビリを提供するシステムの提供を開始しました。480本の動画がスマホアプリで閲覧でき、オンラインチャットを用いてリハビリ職のサポートが受けられます。近くにリハビリ施設がない人や、日数制限でリハビリが受けられない人の支えとなることが期待されています。

この他にもリハビリで使用する機器をネットにつないで解析する装置や、脳波を察知して麻痺した手足を動かす技術など様々な研究が行なわれています。

AI(人工知能)はリハビリの仕事を奪うのか?

AI技術が進歩することで人間が行なわなければならない仕事は減少すると言われています。では、AI技術が進歩することで理学療法士や作業療法士のリハビリの仕事は奪われることになるのでしょうか。

週刊エコノミストに掲載された職業別自動化率のデータを引用すると、理学療法士の仕事の自動化率は0.4%、作業療法士の自動化率は0.1%となっています。つまり、理学療法士や作業療法士の仕事はAIで自動化することは難しく、リハビリの仕事がなくなることはないということになります。

AIは蓄積された過去のデータをもとにして判断、実行することを得意としています。そのため、リハビリに関するデータが蓄積されれば、AIがリハビリの結果を分析したり、適切なリハビリプログラムを提案することは可能になります。

しかし、そのリハビリプログラムを実行するのは人間であり、専門的な知識と技術を持った理学療法士や作業療法士が必要であることにはかわりません。患者の体調やメンタル、痛みといった刻々と変化する症状はデータ化することが難しく、この点は人間に頼らざるを得ません。急性期のリハビリでは高いレベルのリスク管理が必要で、命にかかわる判断をAIに任せて良いのかという問題もあります。AIが進化することで理学療法士や作業療法士の仕事がなくなるということはありません。

AI時代になると理学療法士は給料が下がるのか?

AIが導入されるようになると理学療法士は個人の実力が重視されるようになると考えられます。AIの導き出した指示にしたがって単調に仕事を行うだけの人材には高い給料は払われないでしょう。一方でAIでは補えない専門的な知識や経験、技術を持つ理学療法士は評価され給料は上がることになります。AIが導入されることで給料が上がるか下がるかは本人の実力次第と言えます。

AIよりもロボットのほうがリハビリ職には影響がある?

リハビリでは患者を支えながら訓練を行なったり車椅子の患者を移乗させる動作が多いため、身体的な負担が大きな仕事です。開発が行なわれている HALなどのリハビリロボットスーツや、介護士を代替するような車椅子運搬ロボットなどが一般的になることはリハビリ職にとっても歓迎すべきことです。ロボットは重たい介護を人間のかわりに行なってくれますが、ロボットのセッティングや操作は人間が行なわなければなりません。患者の身体機能や症状は人によって違うため、ロボットを使用するにしてもリハビリ職の専門的な知識や技術が必要なことはかわりません。

先ほども紹介したように介護施設によってはコミュニケーションロボットを認知症予防などに活用しています。現在のコミュニケーションロボットの会話は単調になりがちですが、今後技術が発達すれば人間と同じように会話が出来るようになるそうです。会話をリハビリととらえれば、ロボットが言語のリハビリを行なうようになる可能性はあるかもしれません。

リハビリよりもAIの影響を受ける職種は?

リハビリよりもAIの影響を受けると言われているのは、診療放射線技師や薬剤師の仕事です。週刊エコノミストに掲載された職業別自動化率のデータを引用すると診療放射線技師の自動化率は62.4%、薬剤師の自動化率は38.8%となっており、大部分がAIによって代用できるとされています。

診療放射線技師や薬剤師の仕事の自動化はすでにはじまっており、撮影画像の解析や、処方した薬の管理や鑑査、調剤などには高度なコンピューター技術が導入されています。仕事がなくなることを懸念する意見はありますが、もともと診療放射線技師や薬剤師の仕事は多忙であり、AIの導入によって忙しさが緩和されたり、医療ミスが減少するなど好意的な意見もみられます。AI化が進むことで薬剤師による在宅訪問サービスがもっと普及できるのではないかという期待もあります。

医師の仕事も診療科目によってはAIの影響を受けます。グーグルが開発したAI「DeepMind」は目の疾患を診断することができ、現状でもその診断精度は人間の医師を上回ると言われています。実用化されれば医師の診断時間を短縮でき、目の病気を早期発見することで失明のリスクを抑えることができます。

AI(人工知能)時代でリハビリ職が心得ておくこと

AI技術が進歩すればリハビリ結果の解析やリハビリプログラムの立案などにAIが利用できるようになり、リハビリ職の働き方はかわります。しかし、実際に患者に治療を提供するのがリハビリ職であり、専門的な知識や技術をもった理学療法士や作業療法士が必要であることには変わりありません。AI時代を恐れるのではなくAIの技術を上手に取り入れ、現在よりも患者に良いリハビリが提供できるよう共存していくことが重要です。

変化する患者の容態に合わせた専門性の高い施術や、患者の気持ちに寄り添う心のこもった対応はAIではできません。高い専門性を持ち患者から信頼される理学療法士、作業療法士になって欲しいと思います。

理学療法士・作業療法士を目指す方はこちらも参考になります

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この記事を書いた現役の理学療法士は・・・

理学療法士 7年目(33歳・男)

大学卒業後、一般企業に就職し社会人を経験。その後理学療法士を目指して4年制のリハビリ専門学校へ入学。病院・介護老人保健施設・デイケアで働く経験を持つ現役の理学療法士。

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