理学療法士や作業療法士になるためには、最後に行なわれる国家試験に合格しなければなりません。確実に合格するためには国家試験対策を行なうことが重要であり、グループ学習を取り入れることで効率的に勉強を行なうことができます。ここではグループ学習を中心とした国家試験対策について説明します。
- 記事の執筆者:久留米リハビリテーション学院 教務部長 大坪健一
- 記事の監修者:医療法人八女発心会 姫野病院 整形外科医 姫野信吉
1.国家試験の難易度と内容
1-1.理学療法士の場合
過去5年間の理学療法士の国家試験合格率は以下のようになっています。
24年度 | 25年度 | 26年度 | 27年度 | 28年度 | |
受験者数 | 11,411 | 11,129 | 12,035 | 12,515 | 14,379 |
合格者数 | 10,115 | 9,315 | 9,952 | 9,272 | 12,388 |
合格率 | 89.0% | 83.7% | 82.7% | 74.1% | 90.3% |
以前は合格率90%を越えることが多かった理学療法士国家試験ですが、近年は合格率にバラツキがあり難しい年には4人に1人が試験に落ちる結果となっています。受験者全員が養成学校で必要な単位を習得した学生であることを考えると、あなどれない難易度の試験と言えるでしょう。
試験はマークシート方式で5つある選択肢の中から、1つまたは2つの正解を選択します。試験は主に医学全般について出題される「一般問題」と、理学療法士の専門分野について出題される「実地問題」に分けられます。例年の合格ラインを参考にすると総得点で60%以上、実地問題で36%以上正解することで合格となります。
1-2.作業療法士の場合
過去5年間の作業療法士の国家試験合格率は以下のようになっています。
24年度 | 25年度 | 26年度 | 27年度 | 28年度 | |
受験者数 | 5,285 | 5,474 | 5,324 | 6,102 | 5,983 |
合格者数 | 4,084 | 4,740 | 4,125 | 5,344 | 5,007 |
合格率 | 77.3% | 86.6% | 77.5% | 87.6% | 83.7% |
作業療法士の国家試験合格率は理学療法士と比較すると若干低い傾向にあります。しかし、近年は理学療法士の合格率が下がってきている傾向にあり、合格率に差はあまりありません。難易度が高い年には合格率は80%を下回るため、確実に合格する為には万全な国家試験対策を行なう必要があります。
試験の出題形式は理学療法士と同じであり、マークシート方式で5つの中から1つまたは2つの正解を選びます。一般問題と実地問題があり、例年の合格ラインは総合で60%以上、実地問題で36%以上の得点を獲得することとなっています。
2.国家試験の学習方法
2-1.一人で学習する
高い学力があり分からないところを自分で調べながら効率よく勉強が出来る人は1人でも国家試験の勉強を行なうことが出来ます。勉強に対する意欲が高く、1人の方が集中できると言う人はこの方法でも問題はありません。
しかし、自分の実力を過信したり、間違った勉強方法をしてしまうと試験に失敗してしまうリスクがあります。
2-2.少人数のグループで学習する
勉強を苦手に感じており自分ひとりで勉強することに自信がない場合や、1人では勉強に集中できない人は少人数のグループ学習がおすすめです。グループ学習にはメンバー全員の学力をひきあげる効果が期待でき、学校によっては国家試験対策として少人数のグループ学習を取り入れているところがあります。
グループ学習ではわからないところをお互いに教えあいながら効率よく学習ができ、がんばっているメンバーに感化されることで他のメンバーも勉強をがんばることができます。最終学年は臨床実習や就職活動があることから、国家試験対策にかけられる期間は限られており、効率的に勉強することが必要となります。グループ学習では優秀な生徒が勉強が苦手なメンバーに効率的な方法をアドバイスしながら勉強できるため、試験に失敗するリスクを減らすことが出来ます。
3.経験者がオススメするグループ学習
3-1.一人で学習するデメリット
1人で学習する際に注意が必要なのは、間違った勉強方法で非効率な勉強を行なってしまったり、自分の学力を過信し勉強量が不足してしまうことです。1人で勉強する場合は自分の実力を客観的に評価し、分からない点や不安に感じる点は教員や友人にアドバイスを求めるなど、孤立した状態にならないようにすることが大事です。
1人で勉強する方法は日常的に勉強する習慣がない人や、勉強が苦手と感じている人にはあまり向いていません。その理由は効率的な勉強方法がわからないため実力がのばせなかったり、勉強に集中できずについついネットやテレビなどの娯楽に逃げてしまうことが多いからです。勉強に自信がない人はグループで勉強するようにしたほうが、実力を伸ばすことが出来る可能性は高いです。
3-2.グループ学習ってどんな風にするの?なぜ効果的?
国家試験前の数ヶ月間は授業がなくても出来るだけ学校に通うようにし、学生ホールや図書室、空いている教室などを利用してグループで勉強を行ないます。グループ学習に決まった勉強方法はありませんが、過去問の勉強と国家試験対策用の参考書を中心に勉強するのがおすすめの方法です。
わからないところは他のメンバーに質問し、分かるところは教えてあげるようにします。質問する側は分からない点をすぐに解決することができ、教える側も人に説明することで知識を整理することができ、お互いの学力を高めることが出来ます。集中が切れたときは、お互いに問題を出し合う勉強法がおすすめです。気分転換になるだけでなく、見落としている箇所を発見することにつながります。
3-3.しっかり勉強のできるグループに入ろう
グループ学習で注意が必要なのは勉強が苦手な人ばかりで集まらないようにすることです。全員の学力が低いと互いに教えあうことが出来ず、間違った知識を身につけてしまうリスクがあります。効率が悪い勉強法を行なうことで全員の学力が伸び悩む心配もあります。
周囲にやる気がない人や遊ぶ方向へ誘惑する人がいると集中して勉強は出来ません。グループ学習をする際は、しっかり勉強が出来るグループに入るようにしましょう。
3-4.自分にあった学習法を見つけよう
国家試験対策はグループ学習がおすすめであることを説明しましたが、無理にグループに固執する必要はなく、勉強していく中で自分にあった方法が見つかればその方法を選択して構いません。グループでの勉強が合っている人はグループ学習を選択すれば良いですし、1人の方が集中できると言う人は、勉強に行きづまった時や気分転換をしたいときにグループ学習を活用すると良いと思います。
4.これだけはしておきたい国家試験対策
国家試験対策で絶対にしておかなければならないのは過去問対策です。過去10年の問題は何度も解き、満点が取れるぐらいの状態にしておきましょう。国家試験では似たような問題が出題されることが多く、過去問を解くことで得点は確実にアップします。最近ではパソコンやタブレットを使って過去問対策が出来るため、上手に活用して効率よく勉強するようにしましょう。
あとがき
国家試験に合格しなければ学校を卒業しても理学療法士や作業療法士として仕事を行なうことは出来ません。そのため、国家試験対策は絶対に合格しなければなりません。
国家試験対策ではいかに自分が勉強をがんばれる環境におくことができるかが大事であり、その手段としてグループ学習は非常に有効です。グループ学習を上手に取り入れ、確実に合格できる実力を身につけましょう。