作業療法士の活躍の場は「世界」に!海外で働くための選択肢を知っておこう

様々な分野でグローバル化が進む現代、作業療法士の活躍の場も日本国内にとどまらず世界へと広がりを見せています。作業療法士が海外に働く場を求める理由も、国際結婚による移住や、さらなるスキルの獲得、国際的な社会貢献など、非常に多様化してきています。

では、作業療法士が海外で働くには、一体どうすればよいのでしょうか?

今回は海外で作業療法士が働くためのさまざまな選択肢をご紹介していきたいと思います。

 

1.作業療法士が海外で働くために必要なものは?

作業療法士は多くの国々でその専門性を認められた職業です。そのため、海外で作業療法士として働くには、作業療法士の免許を有し、かつ、その国で求められる作業療法士としての水準を満たす知識や技術を身につけていることが大前提となります。

海外でも通用する作業療法士の資格を取るためには、主に以下の2つの方法があります。

(1)国内の学校で作業療法士の資格を取得する

日本国内で取得した作業療法士免許は、海外で働く際にも必要となる場合があります。

国によっては、その国の作業療法士養成校を卒業していなくても、日本の免許があれば手続きを行うことで作業療法士免許を取得できるケースもあります。

また、海外でのボランティアへ参加する場合も、日本の作業療法士免許を取得していることが参加の条件とされています。

将来的に海外で働くことも視野に入れておきたい人は、まずは国内でしっかり学び、作業療法士の資格を取得しておくとよいでしょう。

国内の作業療法士養成校で作業療法士免許の取得を目指す場合、学校選びの重要な選択基準となるのが、学校がWFOT(世界作業療法士連盟=World Federation of Occupational Therapists)認定校であるかどうかです。WFOT認定校とは、WFOTが定める厳しい教育水準を満たし、WFOTから認定を受けた養成校のことをいいます。

※参考:「世界作業療法士連盟(WFOT)」認定校マーク

国によってはWFOT認定校を卒業していることが免許取得の条件となりますので、WFOT認定校に学び、卒業認定を取っておくことは海外での就職を考えるうえで大きな強みとなるでしょう。入学を希望する養成校がWFOT認定校であるかどうかは、日本作業療法士協会のウェブサイトから確認できます。

※参考:日本作業療法士協会ウェブサイト

(2)海外で作業療法士の資格を取得する

日本の作業療法士免許を取得していても、海外で通用する作業療法士免許を取得するためには、その国の作業療法士に求められる水準を満たすためにさまざまな条件を求められます。

国によっては、改めてその国の養成機関(もしくは大学等)へ入学しなおす必要が生じることもあります。

さらに、日本人が海外で作業療法士の資格を目指す場合、その国の言語の習得はほとんどの場合で必須条件となります。しかも、日常的な会話だけではなく、医療関係の専門用語などの理解も必要です。本人の語学力を証明するために、語学試験で一定水準以上のスコアを取ることが免許申請の条件となることもあります。

まずはその国の作業療法士免許の取得条件を確認し、準備を進めていきましょう。

2.海外で作業療法士として働く場合(アメリカの場合)

海外で働くことを検討する場合、最初にクリアしなければならないのが言葉の問題です。公用語が英語の国々は、日本人にもなじみのある英語がコミュニケーションの主軸となるため、比較的選択肢として候補に挙がりやすい国と言えるでしょう。今回は作業療法士人口「世界一」のアメリカでの事例をご紹介します。

AOTA=米国作業療法学会(The American Occupaataonal Therapy Association, Inc.)のウェブサイトによると、アメリカで作業療法士の資格を取るための条件は以下の通りとされています。

(1)認定された作業療法士または作業療法士アシスタント教育プログラムの卒業生であること

アメリカで作業療法士として働くためには、作業療法士の修士号が必要となります。大学で作業療法士国家試験を受けるための必須科目の単位を取得していることも条件となりますので、不足があれば改めて取得する必要があります。

(2)実習の要件を満たしていること

実習にはLevel 1 FieldworkとLevel 2 Fieldworkの2種類あります。

Level 1 Fieldworkにおける目標は、それまでに培った知識を実践で応用し、クライアントのニーズを理解するための経験を積むことです。実習は最低100時間の実績が必要とされます。

Level 2 Fieldworkにおける目標は、有能で幅広い知識を持った作業療法士を育成することになります。実習は最低24週間の実績が必要です。

(3)NBCOT認定試験に合格すること

作業療法士国家試験を管理しているNBCOTが定める規定をクリアしていれば、国家試験を受験することができます。

(4)免許の申請

NBCOT認定試験に合格すると、免許の申請を行うことができます。アメリカ合衆国の場合は各州によって必要な手続きが異なるため、希望する勤務地の情報を入手します。

免許を取得後、実際にアメリカ国内の勤務地で働く場合、就労ビザの取得や英語能力の証明が必要になります。

アメリカでは職業としての作業療法士の人気は高く、職業ランキング(50 BEST JOBS in America for 2018)では、なんと4位に輝いています。

アメリカでの活躍の場は医療や福祉の現場をはじめ、保育や教育の分野等にも広がっており、さまざまな領域で作業療法士の専門性が必要とされているのです。

3.ボランティアとして海外で作業療法を行うこともできる

作業療法士としての知識や技術を海外で活かしたい場合、海外ボランティアに参加するという選択肢もあります。

海外ボランティアとしては、JICA(独立行政法人 国際協力機構)の青年海外協力隊やシニア海外ボランティア派遣が筆頭に挙げられます。JICAはサポート体制が手厚いため、海外ボランティアが初めての方にはおすすめのプログラムです。

JICAの青年海外協力隊の募集は春と秋の年に2回行われます。募集の期間は40日であり、基本的にはWeb上での応募となります。

作業療法士が青年海外協力隊に参加する場合、派遣先は開発途上国の中でも作業療法の数が少ない地域や、作業療法の認知度自体が十分でない地域などとなります。過去にはインドネシア、ベトナム、ネパール、フィジー、コスタリカ、ドミニカ共和国等、幅広い地域に作業療法士が派遣されています。

4.留学生として海外の大学や医療現場で学ぶこともできる

海外で作業療法士の免許を取得するために大学への留学を希望する場合、WFOTのホームページに掲載されたWFOT認定大学のなかから留学先を絞り込むことになります。

作業療法を学ぶ学校といっても、カリキュラムの内容や留学の期間、さらに留学に必要な資格も国や大学によってさまざまです。自分一人で留学のための準備をするのが難しい場合、留学サポートに実績のある機関等に相談してみても良いかもしれません。

日本国内で既に作業療法士として勤務している場合、勤務先が独自に海外での研修制度を設けているというケースもあります。作業療法士が単独で研修に参加できることもありますが、多くは医師や看護師等の医療従事者のチームとして参加することが多いようです。

参加の目的や参加条件、研修先などはそれぞれの機関で独自に定められますので、条件が合う場合は積極的に研修制度を活用しても良いでしょう。

5.海外で活躍している作業療法士の事例

ここで、青年海外協力隊として2年間開発途上国で作業療法の仕事に携わった友人の事例を紹介したいと思います。

友人は日本の総合病院で3年間の経験を積んだのち、青年海外協力隊に参加しました。派遣先はスリランカの特別支援幼稚園です。スリランカは作業療法士の数がまだまだ少なく、派遣先の地域では、作業療法を展開していくシステムも十分に確立されてはいなかったそうです。そのため、幼稚園の先生や保護者に向けて疾患や障害についての講義や作業療法の実技についてのワークショップ等を行う傍ら、直接子どもたちのリハビリにも携わっていました。

滞在中は言葉や文化の壁に悩んだり、体調を崩したりといった困難もあったようですが、現地の人々の温かさに助けられ、作業療法士としても人間としても大きく成長できたと語っています。

6.作業療法士として海外で働くなら、まずは日本国内の養成校を卒業しよう!

作業療法士として海外で働くためには、さまざまな選択肢があります。

海外の大学等に入学して、卒業後に国家試験を受験して免許を取得するケースもありますが、免許取得までの生活費や学費を都合しながら言語の習得に励み、さらにこれらと併行して作業療法士になるための必要なカリキュラムをこなさなくてはならないため、かなりハードな道のりに感じられるかもしれません。

多くの国では、日本人が海外で働くためには、日本の作業療法士免許を取得していることが基本条件となっています。そのため、まずは国際的な水準を満たすWFOTの認定を受けた国内の養成校に入学し、卒業認定を受けておくことをおすすめします。在学中は作業療法の知識や技術の習得に努めるとともに、海外での作業療法士についてさまざまな情報を収集して、将来の活躍のための準備を進める期間として有意義に過ごしてみてはいかがでしょうか。

運営者情報

サイト運営者 専門学校 久留米リハビリテーション学院

メルマガ・LINE・SNSで最新情報発信中!