理学療法士や作業療法士を目指す上で気になるのは、実際に働く職場での環境や女性の場合は結婚や子育てに関することではないでしょうか。
作業療法士として働き、結婚・出産を経験した現役のセラピストが実体験をもとに、作業療法士の仕事と結婚の事情をご紹介いたします。
- 記事の執筆者:久留米リハビリテーション学院 教務部長 大坪健一
- 記事の監修者:久留米リハビリテーション学院 作業療法学科 学科長 岡 大樹
作業療法士が結婚する年齢
厚生労働省によると、平成26年の女性の平均初婚年齢は29.4歳、年齢別にみた初婚率は、25~29歳で高くなっています。
平成26年 人口動態統計月報年計(概数)の概況(出典:厚生労働省)
女性の作業療法士が結婚する年齢も、一般的な平均初婚年齢と大差はないといえるでしょう。私の周りでは、20代後半で結婚し、30代で子供を持つ女性作業療法士が多くいます。
なかには、30代や40代で結婚する人、独身の人もいますが、作業療法士だからといって結婚年齢が一般の平均と比べて特別に早くなる、または、遅くなるということはないようです。
作業療法士は、どのような人と結婚しているか?
女性作業療法士の結婚相手は、理学療法士、作業療法士同士の結婚が多い印象を受けます。ですが、意外と周りをみてみると、一般企業にお勤めの方と結婚している作業療法士も多くいます。
私の場合は、作業療法士同士の結婚ですが、理学療法士と結婚した作業療法士もいれば、他の職種の方と結婚されている方も多くいます。
大きな病院の中では、作業療法士、理学療法士同士の結婚率が高くなりますが、私の周りをみてみると、意外と他の職種の方と結婚されている作業療法士率が高いです。
作業療法士の出会い
作業療法士はどのようなところで異性と出会うのでしょうか。作業療法士同士の出会いと他の職業の方との出会いについてみていきましょう。
作業療法士同士の出会い
作業療法士同士の出会いの場で、最も多いのはやはり職場でしょう。働く作業療法士の数が多い大きな病院ほど、出会いの機会は多くなります。男性の作業療法士の数は理学療法士に比べて少ないですが、同じ作業療法室で過ごし、同じ仕事を行うため、必然的に過ごす時間が多くなり、出会いの機会も増えるのでしょう。
理学療法士との出会いも、同じリハビリ室内で過ごし、同じ患者様を担当すると、お互いコミュニケーションをとることも多く、出会いの機会は増えます。理学療法士と作業療法士という関係性から、お互いの意見を交換し合い、一緒に同じ患者様を支援するという共同作業を行う面も影響しているのかもしれません。
その他、勉強会や講習などへ参加した際にも作業療法士、理学療法士と出会う機会は多くあります。医療専門職の中でも看護師と違って、一般的にはあまり知られていない職種であるため、一般の人にはなかなか理解してもらえない仕事の悩みや辛さも、同じ職種であるがゆえに共感し合えることや、仕事に関する意見で意気投合するということは多いのかもしれません。
別の職業の人との出会い
作業療法士や理学療法士以外の職業の人との出会いは、実際に出会っている人の話を聞くと、「学生の頃から付き合っていた」、「友人の紹介で出会った」と言う人がほとんどです。別の職業の人との出会いは、一般的な出会いと変わらないようですね。
作業療法士 結婚後の仕事
女性の作業療法士が結婚すると、その後の仕事にはどのような影響があるのでしょうか、出産した場合は仕事に戻る人が多いのでしょうか、作業療法士の結婚後の仕事についてみてきましょう。
結婚による仕事への影響
作業療法士の結婚後は、結婚前と変わらない体制で働き続ける方が多いです。作業療法士、理学療法士との職場結婚の場合は、職場の規則によって、もしくは、当人同士が結婚後も同じ職場で働くことを敢えて避ける夫婦は、どちらかが職場をうつるケースもあります。
同じ職場でない場合や、別の職業の人と結婚した場合は、夫婦の考え方や、結婚後に引っ越しする場合などによって、女性が常勤からパートに変わるケースや、退職するケースもあります。いづれにしても、作業療法士という職業を好きで、誇りを持って働いている人が多いので、パートや引っ越し先などで何らかの形で作業療法士の仕事に携わっている方が多いと思います。
私の周りの作業療法士同士の結婚の場合は、親の介護や子どもの預け先がないなどの家庭の事情や、他の職業に転職したなど以外は、ほぼ共働きです。医療専門職であるので、従事すれば従事するほど、色々とやりたいこと、知りたいことが出てきます。お互い、仕事への理解もあるため、結婚後も作業療法士として活躍している女性はたくさんいます。
産休育休の取得と復職
作業療法士の産休・育休の取得は、職場によるところが大きい印象を受けます。産休・育休を経て復職している作業療法士がいる職場では、先輩が前例をつくってくれているため、産休・育休をとりやすいと思います。
一方で、妊娠中に辞めていく作業療法士が多いのも実情です。特に、身体障害分野では、患者様を介助のために抱えたり、支えたりということも多いため、その辺りのサポートや配慮が足りない職場では、妊娠中の身体へ負担がかかり、仕事を続けることができなくなるケースもあります。また、出産後に復職した際に、急な休みをお願いするなどのサポートが期待できないことを見越して退職するケースもあります。
実際に、産休・育休を経て復職しても、子どもの発熱などで急な休みをとることが重なると、「患者様にも職場の同僚にも迷惑をかけてしまう。子どもにも負担をかけている。このまま働き続けていても良いのか。」という悩みが出てくることがあります。そこをどう考えるのか、というところが仕事を続けるかどうかのターニングポイントといえるでしょう。
子どもが小さいうちは、作業療法士の仕事を続けるかどうかは、割り切って主婦に徹するのか、両親や病児保育などに預けて仕事を続けるのか、職場の理解を得て休むのか、の選択によるでしょう。その職場で成し遂げたいことがあるのか、パートや他の職場でも納得出来ることなのかという、今後の自分のなりたい作業療法士像も関係してくるでしょう。
どのような職業でも言えることですが、出産前に、子どもが病気をして、仕事を休まなければならないとなった場合に、どのような方法をとるのか、自分がどのような働き方、作業療法士像を目指していくのか、ということを夫婦で確認しておくことが大切です。
まとめ:実際に仕事と結婚を両立した作業療法士から
作業療法士は一生の仕事となる職業です。医療専門職であるので、結婚や出産など、女性のライフスタイルの転機となるイベントが起こっても、職場を変えて、分野を変えて、働く形態を変えて、働き続けることができます。結婚後に退職し、出産後の状況に合わせて、パートとして働き続けている作業療法士もいます。作業療法士といえども、分野や職場によって全然中身は違います。それぞれの職場で、初めてのことをたくさん学びました。何年経験を積んでも、新しいことを学び続けられる仕事です。作業療法士の仕事は幅広いので、どのような作業療法士になりたいかを明確に持って、進んでいってほしいと思います。
作業療法士は患者様に寄り添う姿勢が必要となります。結婚、出産を経験することで、患者様の生活や人生を想像しやすくなります。自分の人生経験が活かせる仕事ですので、是非、いろいろな経験を乗り越えて、作業療法士としての深みを増していってください。