作業療法士としての第一歩を踏み出すために避けて通れないのが就職試験です。志望先によって試験のスタイルはさまざまですが、中でも最も重要視されているのが「面接」です。しかし、多くの学生が面接には苦手意識を持っているというのも事実です。
今回は、面接への苦手意識を解消し、面接試験を成功させるためのポイントをご紹介いたします。
- 記事の執筆者:久留米リハビリテーション学院 作業療法学科 学科長 岡大樹
- 記事の監修者:久留米リハビリテーション学院 教務部長 大坪健一
作業療法士面接試験のための準備
作業療法士の面接試験のための準備として、最も大切なものを一つ挙げるとすれば、就職志望先の「基本理念」や「基本方針」を熟知しておくということです。これらは、志望先のホームページやパンフレットなどに記載されているはずですので、必ずチェックしておきましょう。
病院をはじめとする医療機関では、この理念や方針は非常に大きな意味を持ちます。リハビリテーションの部門だけでなく、機関全体が目指すものをはっきりと示しているからです。逆説的に言うと、理念や方針に共感できない場合は、志望先としてふさわしくないかもしれません。
理念や方針を丸暗記するのではなく、自分の言葉としてしっかり消化した上で、「作業療法士としてどうふるまいたいのか」をシュミレーションしておきましょう。
面接での印象をよくするために
友人関係などでは「第一印象はいま一つだったけれど、付き合ってみるといい人だった」ということもあるかもしれません。しかし、面接試験に「次」はありません。また、一度悪い印象を与えてしまうと、限られた時間内で挽回するのは大変なことです。
実は、人の第一印象を左右する条件は、ある程度決まっています。そのため、押さえるべきポイントを押さえることによって、第一印象を良くすることは可能なのです。以下のポイントを参考にしながら、面接に向けた第一印象アップに取り組んでみて下さい。
身だしなみ
第一印象は身だしなみによって大きく左右されると言っても過言ではありません。身だしなみを整えることは社会人としてのマナーを守る第一歩。身だしなみは自分のために行う「お洒落」とは異なり、相手に安心感や信頼感を持ってもらうために行うものです。
作業療法士の面接においては、患者様や利用者様、一緒に働くスタッフたちに安心感と信頼感を抱いてもらうため、「清潔感」のある身だしなみが求められます。
髪型
髪の色が明るすぎる場合は自然な髪色に戻しましょう。前髪は目にかからないようにカットするか、女性の場合はヘアピンなどで留めておくようにします。女性のロングヘアはスッキリまとめる必要がありますが、ヘアアクセサリーは華美なものを使用しないように気を付けましょう。
服装
体形に合ったシンプルなデザインのスーツを着用します。汚れやしわなどが無いものを着用しましょう。男性の場合、シャツやズボンはきちんとプレスされたものを準備しておきましょう。女性は、シャツの下のインナーの透けにも注意が必要です。面接会場で名札が配られる場合は、きちんと名前が見えるようにつけておきます。
メイク
女性の場合は品のあるナチュラルメイクを心がけます。医療現場ではマニキュアはNGです。爪は短く切りそろえ、整えておきましょう。
男女ともに、面接の会場に入る前には、一度鏡で身だしなみをチェックしておくと安心ですね。
表情
いざ面接試験となると、どうしても緊張のために表情が硬くなってしまう方が多いようです。でも、無表情では相手に「何を考えているのか分からない」というネガティブな印象を与えてしまいます。できるだけ口角を挙げることを意識して、明るい表情を作りましょう。口角を挙げることで自然と目の表情も和らぎ、自然な笑顔になります。相手の話を聞くときに、特に心がけたい表情です。
ただし、自己PRや志望動機など、自分の思いを相手にしっかり伝えたい時は、笑顔は抑えて。表情にメリハリをつけることで、より真剣な思いが伝わりやすくなります。
応対の仕方・話し方
応対の仕方
面接の際の応対で気を付けたいのが「視線」や「姿勢」です。
面接中は面接官の目を見ながら話をする、というのが基本ですが、自信のない質問に思わず目を伏せてしまったり、油断してきょろきょろしたりしてしまう学生も意外と多いものです。
一対一で面接官と話しをしているときは、相手の目を見つめるようにしましょう。といっても、ずっと見つめ続けていると相手も圧迫感を感じてしまうので、時折目線を外すようにします。
面接官が複数いる場合、まずは質問をしてくれた面接官に視線を合わせて会話するように心がけます。しかし、一人を注視して話し続けるのではなく、話の間合いを見て、その場にいる他の面接官にきちんと視線を配るようにしましょう。
また、意外におろそかになりがちなのが姿勢です。初めは意識しているつもりでも、受け答えに集中するあまり姿勢に意識が回らなくなったり、時間の経過とともに無意識に楽な姿勢を取ってしまったりすることもあります。姿勢が崩れると、だらしなく横柄な印象を与えてしまいがちです。普段から正しい姿勢をとるように心がけておきましょう。
椅子に座る際は浅めに腰かけ、背筋を伸ばして背もたれを使用せずに座ります。男性は足を肩幅程度に開き、女性は膝を閉じて足を揃えて座るときれいです。
話し方
面接時の話し方で心がけておきたいことは、「結論ファースト」で話を進めることです。日本語の場合、どうしても文章の最後に結論が来てしまうのですが、緊張している状態で話していると、冒頭と結論のつじつまがあわなくなってしまうこともあります。そうなると、本当に伝えたいことの内容がどこにあるのか、面接官には伝わりづらいのです。
「私は○○であると思います。なぜならば・・・」と、最初に結論を述べて、その理由を説明するようにすると、相手側も「なるほど」と聞く心構えができますし、一番伝えたいことを確実に伝えることができます。
そして、ひととおり自分の意見を述べた後は、「以上です」などの締めくくりの言葉を入れるようにすると、面接官も安心して次の質問に移ることができます。
作業療法士の面接でよく聞かれる質問
作業療法士の面接で、面接官から聞かれることの多い質問をいくつかご紹介します。
なぜここに入りたいと思ったのか?(志望動機)
ほぼ全ての面接において質問されるのが、この「志望動機」です。この質問の裏には、
- 学生が志望先にどれほどの熱意を持っているか
- 学生が作業療法士としてやりたいことと、志望先の理念や方針が一致しているか
- 志望先が欲しい人材にふさわしい人柄を備えているか
ということを確認したいという面接官の意図が隠れています。
そのため、志望動機を答える際には、これらの内容を自分なりに整理して伝えることが大切です。
回答のポイントとしては、
- 事前のリサーチで洗い出した、その志望先にしかない特徴や強みに魅力を感じていること
- その現場で、作業療法士としてこうありたいというビジョン
- そのような思いに至った経緯や経験
などを織り込み、自分の言葉で思いを伝えるようにすると良いでしょう。
職場に希望することは?
職場に対する希望のうち、どうしても伝えるべきことがある場合はしっかり面接の場で伝えておく必要があります。例えば、「家族の介護を理由に、18時以降には帰宅する必要がある」など、正当な理由がある場合がこれに当てはまります。
しかし、それ以外の場合は、「職場の理念や方針をきちんと理解した上で、自分の希望を伝えられるか」を確認する質問ととらえて返答すると良いでしょう。
総合病院などで特に希望する部署がある場合、病院の取り組みなどを事前にリサーチして、それを盛り込みながら希望を伝えると良いでしょう。
例えば、在院日数の短縮に取り組み、成果を挙げている病院であれば、上記のポイントを押さえて以下のように伝えることもできます。
「貴院が積極的に導入されている、ベッドサイドからの早期作業療法に非常に関心があります。配属の希望が叶うのであれば、急性期病棟で経験を積み、患者様の早期の社会復帰のサポートをさせていただけたらと思っております」
面接で質問をするときのポイント
面接の最後には、「何か質問はありますか?」と面接官から聞かれることがほとんどです。
この質問は、学生が就職に関して「何を重要視しているのか」を知るためのものであると考えられます。
そのため、「ここで働きたい!」という熱意が伝わる質問や、「スキルアップしていきたい!」という前向きな気持ちが伝わる質問をするのがポイントです。
例えば、「変化する医療情勢に対応するため、今後も継続して作業療法士として知識や経験を積んでいく必要があると感じています。貴院では、入職後の研修や資格を取得するための制度などはありますか?」といったように、研鑽を積むことで職場に貢献したいといった意欲を込めるのも良いでしょう。
作業療法士面接試験の体験談からアドバイス
作業療法士面接試験を受ける前に心に留めておいてほしいことは、面接はあくまでも「コミュニケーション」の場であるということです。面接試験というと、学生はどうしても「評価される側」として正しい答えを出すことにとらわれてしまいがちになりますが、それだけではあなた自身の個性が発揮できなくなってしまいます。
面接官は「間違ったら落としてやるぞ」といういじわるな目で見ているのではありません。緊張してカチコチの学生を見ながら、「この学生はどんな作業療法士になるのかな」と、興味を持って質問してくれているのです。
それを知っておくだけでも、少しだけ気持ちが楽になりませんか?
用意した回答を一方的に伝えるだけの面接では、面接官が一番興味を持っている「人柄」の部分が伝わりづらくなってしまいます。面接官の質問に自分なりの言葉で答え、真摯に前向きに取り組もうという気持ちをにじませることができれば、回答プラスアルファの部分も伝わりやすくなるのではないでしょうか。
かくいう私も面接には苦手意識を持っていました。なぜなら、漠然とした「自信のなさ」があったからです。それを少しでも減らすために私がしたことは、徹底的に志望先のことをリサーチすることと、自分自身について掘り下げて考えること。これをひたすら行うことで、やっと自分のやりたいことと、志望先の方針が一致しているという確信を持つことができたのです。その確信があったからこそ、面接は「評価されに来たのではなくて、志望先の職員の方へ思いを伝えに来た」という気持ちで臨み、それほど緊張せずに面接官と話しをすることができました。
その一方で、自分の希望が明確になっていただけに、「もし、ここがダメだったとしても、やりたいことができる志望先を探せばいいだけ」と思えたのも良かったのかもしれません。
面接は志望先と学生、お互いの希望がマッチしているのかを確認する場でもあります。志望先の雰囲気や面接官とのやりとりの中から、そこが自分の理想の職場になるかどうかを判断してみて下さいね。