作業療法士が活躍できるフィールドは実に幅広く、身体障害領域、発達障害領域、老年期領域、発達障害領域と多岐に渡ります。しかし実際の現場ではこれらの領域に厳密な区別があるわけではなく、領域をまたいで活躍する作業療法士も数多く存在しています。
作業療法士を目指す方には、こうした現場の多様性に対応し、対象者を主体とした作業療法が提供できるような実力を在学中から身に付けていってほしいと思います。
そのためにはどのような学校を選べばよいのか、作業療法歴10年の私なりの視点を加えながらアドバイスをさせて頂きたいと思います。
- 記事の執筆者:久留米リハビリテーション学院 作業療法学科 学科長 岡 大樹
- 記事の監修者:久留米リハビリテーション学院 教務部長 大坪健一
1.実習や実技に本腰を入れて取り組める学校を選ぼう!
作業療法士は「作業」を治療の主な手段として用いるセラピストです。そのため、作業療法士は自分自身が作業そのものを深く理解しておく必要があります。
治療の現場では対象者の状況を正しく分析するとともに、その方が主体的に行える作業活動に治療的な要素を持たせつつ、段階付けや効果判定をすばやく行っていく必要があるからです。それには対象者それぞれの背景や状況、本人のニーズに目を向ける幅広い視点が必要です。
こうした視点やスキルを身に付けるのは簡単なことではありませんが、学生時代に試行錯誤しながら積み重ねた実習や実技の経験は現場で大いに役に立ちます。実際に、実習・実技に力を入れている学校の卒業生は医療の現場に出ても戸惑うことなく行動できていることが多いものです。
作業療法士をめざす方は、まずはこの実習や実技に力を入れている学校を選ぶようにすると良いでしょう。臨床実習はもちろんのこと、評価学やレクリエーション、作業活動の演習は現場に直結する知識として非常に重要であるため、じっくりと学び、深めておきたいところです。
そういった点では、3年制の専門学校に比べて4年制の学校の方が実習・実技の時間を多く設定し、内容も充実していることが多いため、経験を積むために4年制の学校を選ぶというのもお勧めの選択です。
2.医療人としての人間性を育む「人間教育」に力を入れている学校を選ぼう!
作業療法士は単なる機能回復や能力獲得のためだけに治療を行うのではなく、対象者への精神面にもアプローチを行うことが大きな特徴と言えます。当然のことながら、精神面へのアプローチは、対象者と作業療法士との信頼関係があるからこそ、大きな効果を発揮すると考えられます。
また、作業療法士は対象者が自分らしい生活を再構築、再獲得できるように、対象者の生活環境である家庭、学校、職場にも働きかけ、様々な調整を行う場合があります。対象者だけでなく、その人を取り巻く人たちからも信頼されるような人格やコミュニケーション能力を身に付けて行かなければなりません。
こうした人格や能力を磨き、医療人としての自覚を持つためにも、学生時代から接遇マナーをしっかり身に付けておいてほしいと思います。
医療人としての人間教育を重要視している学校では、外部から講師を招いたり、教員と学生がシミュレーションを行ったりと、接遇マナーの教育にも積極的です。身に付いた接遇マナーは治療の現場だけでなく、就職活動などにも役立ち、一生モノの財産になります。
人間教育に力を入れている学校は、教員たちが「熱い!」のも特徴です。こうした学校の先生たちは、未来の優秀な作業療法士を世に送り出すために心魂を傾けて日夜教育に当たっています。オープンキャンパスや見学会などで、その熱意を確かめてみて下さい。
3.自分自身が生活者であることを楽しめる学校を選ぼう!
「対象者の生活と人生をデザインする仕事」とも言われる作業療法士は、対象者に寄り添いながら、人生をサポートしていくパートナーのような存在です。
そんな作業療法士をめざす方には、まずは自分自身が生活者であることを楽しんでほしいと思います。学校で作業療法についての学びを深めつつ、一方で自分自身の生活を楽しむことができれば、ちょっとした事にも作業療法的な視点が生まれ、将来の治療のヒントにもつながります。
私自身は3年制の養成校を卒業しましたが、いつも課題や勉強に追われていて、学んだ知識を自分の生活に結び付けるという時間を十分に取れず、もったいないことをしたと思っています。
カリキュラムに余裕のある4年制の学校で自分の時間も勉強も両方楽しみつつ、ちゃっかりと将来の治療に役立つ引き出しを増やしていってみてはいかがでしょうか。
おわりに
作業療法士は対象者の人生そのものに深くかかわることができる、やりがいのある仕事です。
対象者一人一人の背景をしっかり受け止め、きめ細やかなサポートが行なえる作業療法士になるためにも、たくさん情報収集をして、納得のいく学校選びを行って下さい。