あなたが理学療法士になりたい理由はなんですか?
もしあなたがこれから理学療法士になろうと考えているとしたら、この質問への答えを準備しておくといいでしょう。
理学療法士になるための学生生活は、決して楽なものではありません。一般的な学生生活のような長い夏休みもありませんし、出席していればなんとかなるような授業ではありません。脱落してしまう同級生もいることと思います。つらいときに「理学療法士になりたい!」という熱い気持ちがあった方が、乗り越えられる可能性が高まります。
- 記事の執筆者:久留米リハビリテーション学院 教務部長 大坪健一
- 記事の監修者:久留米リハビリテーション学院 作業療法学科 学科長 岡 大樹
理学療法士の就職活動に必要な志望動機とは?
順調に学生生活を送り、新年度からの新生活のために就職活動を行うことになったあなた。理学療法士の就職試験も、一般企業のものと大きく変わりません。履歴書には志望動機を書く欄がありますし、面接があれば、志望動機についても聞かれる可能性が高いでしょう。
面接での採用担当者からの質問としては、2通りのパターンが考えられます。「理学療法士になりたい理由」と「当病院(当施設)で働きたい理由」です。
理学療法士と一口に言っても、働くフィールドは多岐に渡っています。特に近年は医療現場だけでなく、介護福祉の領域や健康増進(フィットネス)の分野にも広がりを見せています。いろいろなジャンルから働きたい場所を選べるようになったということです。
そのため、「なぜ、うちなのか?」という点は、雇いたい側にとっては重要なポイントです。仕事の内容や役割も、職場によって大きく違います。「こんなはずじゃなかった」とすぐにやめてしまってはお互いにとって不利益となります。そのため、面接ではしっかりと自分の言葉で答えられるようにしておきましょう。
理学療法士になるための志望動機の書き方ポイント
では履歴書に記入する志望動機について考えていきましょう。ここに書いたことは面接でのやりとりのベースになりますから、しっかりとまとめておくことが重要です。
志望先の理念を自分なりに解釈する
志望している病院や施設のホームページを見ると、必ずその法人の理念が書かれています。医療や介護の分野は社会的な貢献が求められる業種ですから、「病院が目指すもの」や「果たしたい役割」などが書かれています。
受け入れられないような極端なことは書いていないと思いますが、表現が難しい場合もあると思います。就職したらその法人の理念に基づいて行動することが求められます。きちんと目を通して自分なりに解釈をしておくとよいでしょう。
志望先の情報を詳しく調べておく
志望動機が「回復期の病院で働きたい」など、対象が広い内容だった場合は、志望先の情報収集がより重要です。
「回復期の病院はたくさんあるけれど、なぜうちの病院なのですか?」という質問に、曖昧な答えにならないようにしておかなければなりません。そのためには、以下のようなポイントについて情報収集しておきましょう。
- 志望先の力を入れている取り組み
- 他にない強みとなるようなポイント
- 地域性(周辺の医療や介護の環境)と地域の中での存在感
- 自分の目指す方向性との一致について
などを押さえておきましょう。
伝えたいことを箇条書きで書き出しておく
「○○について学ぶならこの病院!」というような有名な病院の場合は、競争率も高いと考えられます。その技術を身につけてから何をしたいのか?というところまできちんと整理しておきましょう。熱意は相手に伝わるものですが、より相手に響くように伝えるにはわかりやすさも大事です。言葉でわかりやすく伝えるためには、準備が必要です。
では、理学療法士の志望動機の例文をいくつか挙げてみましょう。
① 新卒・整形外科志望の理学療法士を目指す場合
理学療法士を目指したきっかけが、学生時代のケガのリハビのために整形外科に通ったことでした。そのため整形外科の分野に以前から興味がありました。整形手術を数多く実施されている貴院で、様々な疾患の患者さんに関わって経験を積んでいきたいと考えて志望いたしました。
② 新卒・回復期志望の理学療法士を目指す場合
私は回復期の病院で臨床実習を行いました。多くの患者さんが退院を目指してリハビリに励まれており、そのパワーの強さに圧倒されました。理学療法士となってからは、患者さんに頼りにされ、多くの患者さんに笑顔になってもらえるように働いていきたいと考えています。地域の回復期リハの中心的な存在である貴院で経験を重ねていきたいと考え志望いたしました。
③ 転職・医療から施設に移る理学療法士志望の場合
私は過去○年間に渡って、病院でのリハビリ業務に関わってまいりました。医療保険制度におけるリハビリでは、時間的な制約があります。リハビリが満足な形で完結しないケースも数多く経験してきました。
患者さんの人生が退院後も長く続くことを考えるうちに、今後は介護保険の分野でこれまでの経験を活かしつつ、長いスパンで患者さんに寄り添っていきたいと考えております。介護分野については全くの未経験ですので、幅広いサービスを提供されている貴法人で一から学んでまいりたいと思い、志望いたしました。
④ 転職・特色のある病院を目指す理学療法士志望の場合
理学療法士として○年間の経験を積んでまいりました。その中で、○○テクニックについては講習会に参加するなどして習得を目指してまいりました。講師の○○先生の神業とも言える治療の実演を目にする機会があり、より深く学んでいきたいと考えるようになりました。ぜひ先駆けである貴院で一から経験を積んで、今後の臨床に生かしていきたいと考え、志望いたしました。
文字数については履歴書によっても異なりますが、あまり長すぎない方が読む側にとっては読みやすいです。200~300字程度でまとめられるように下書きして準備しましょう。
理学療法士になる際の志望動機と転職経験談
筆者自身も現役の理学療法士ですので、参考までに私の志望動機についても書いておこうと思います。実は理学療法士になった時点では、「理学療法士になりたい!」という熱い思いはあまりなく、「手に職をつけたい」くらいの考えでした。覚悟が足りなかった分、学生生活では勉強が大変だった思い出があります。なんとか国家試験に合格できたのは、周りの同級生の手助けがあったからでした。
新卒での就職活動の際は、維持期の病院を受験して採用されました。学生時代の実習先での経験から、高齢者分野に進みたいと考えていました。
その病院には同じ法人内に介護老人保健施設と、グループの特別養護老人ホームもありましたから、包括的に高齢者のリハビリテーションに関われると考えて応募しました。実際の面接の際にも「なぜ、うちに?」と聞かれ、そのように答えたと記憶しています。
転職経験は一度だけあります。家族の都合で引っ越すことになり、Iターンでの転職でした。履歴書の住所が遠方だったことから、そのような事情があることは先方にもすぐに察してもらえました。
転職先に選んだ施設も同じく高齢系の分野でした。前職で病院、デイケア、老健、訪問リハと一通り高齢者リハビリを経験していましたので、「経験を活かしたい」とアピールしました。
おわりに:理学療法士の志望動機を面接でアピールしよう
私が理学療法士になった10年前に比べて、理学療法士の知名度は随分高まったと思います。夏休みになると、理学療法士になりたい高校生が職場見学に来てくれるようになりました。私自身は高校生の頃、理学療法士を知らなかったのですが・・・。
認知されるようになったことは嬉しいことではありますが、就職先を探すことを考えると以前より競争が激しくなってきているかもしれませんね。就職試験のノウハウにも必ず出てきますが、面接での志望動機は重要なアピールポイントです。
大切なのは気持ちがこもっているかどうかだと思います。理学療法士になって、何がしたいか?転職してどんなふうに仕事をしたいか?しっかりとイメージを持って臨んでください。