介護福祉士とは、どのような職業?なるために必要なことから就職先や将来のキャリアアップまで解説
介護のスペシャリストである「介護福祉士」。介護の資格の中で唯一の国家資格でもありますが、実際どのような仕事をするのか、詳しく知る人は多くありません。
このページでは、介護福祉士とはどのような職業なのか、国家試験の情報と国家資格を取得するメリット、なるためのルート、さらに、介護福祉士が活躍する職場や将来のキャリアアップなどについてわかりやすくまとめました。
介護福祉士を目指そうと思っている方、介護分野の仕事に興味がある方はぜひ理解を深めるきっかけにしていただければ嬉しいです。
この記事を書いた作業療法士の先生
津留嵜 衣里子先生(作業療法学科 担当)
大分県の昭和学園高等学校(福祉科)を卒業後、介護福祉士国家資格を取得。その後、久留米リハビリテーション学院へ進学し、作業療法士として就職。介護の知識を生かして活躍後、作業療法士を育成する教員として母校へ戻ってきました。
1. 介護福祉士とは
介護福祉士とは、介護に関連する法律である「社会福祉士及び介護福祉士法」では以下のように定義されています。
- 介護福祉士は、同法に基づく名称独占の国家資格であり、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう
上記を簡単にまとめると、介護福祉士には次の2つの意味があります。
- 介護に関わる名称独占の国家資格
- 高い技術や知識を持ち、介護を職業とする人
これらについて、次から詳しく解説していきます。
1-1.介護福祉士とは、法律によって定められた国家資格である
介護福祉士は、介護福祉士国家試験に合格して資格を有することのできる国家資格です。介護に関する資格は数多くありますが、介護福祉士はその中でも唯一の国家資格です。
また、国家資格には「名称独占資格」「業務独占資格」という分類がありますが、介護福祉士は名称独占資格に該当します。
名称独占資格とは、介護業務は行えても、「介護福祉士」と名乗れるのは介護福祉士国家試験に合格して介護福祉士の資格を取得した人のみ、という意味を持ちます。
さらに、専門的な資格であることを明確にして社会的な信用を得るとともに、介護を受ける人との信頼関係をつくるという目的もあります。
一方、医師や看護師、助産師、准看護師などは業務独占資格であり、資格を持っている人しかその業務に携わることができません。
1-2.介護福祉士とは、高い技術や知識を持ち介護を職業とする人である
介護福祉士は介護のスペシャリストとして広く認知されています。高齢化社会の日本において、専門的な知識と技術を持って介護を実施、指導できる人材としてその活躍が期待されています。
平成23年には「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正がありました。このため一定の条件下において、たんの吸引や、経管栄養・経鼻経管栄養などの医療的ケアの一部を、介護福祉士が行えるようになりました。
このように、介護福祉士の専門性のニーズは高く、介護の現場における中心的な存在として重要な役割を担っています。
2. 介護福祉士はどのような仕事をするの?
介護福祉士とは、具体的にどのような仕事をするのかを確認していきましょう。主な仕事内容には次のものがあります。
- 身体介助
- 生活援助
- 家庭介護のアドバイス
- 介護用具を使う際の指導
- ヘルパーへの指導や助言
それぞれ、どのような仕事内容であるかを詳しく説明していきます。
2-1.身体介助
日常生活を一人で行うことが難しい方に対して、着替えや洗面、入浴、食事、排泄、ベッドからの起き上がり、歩行や車いすの移動、車いすからベッドへの移乗などの動作を対象者の能力に応じて介助します。
できるだけ対象者の持っている能力を活かした介助を行い、対象者が自立した生活を行えるように、専門性を活かした声かけや介助方法、環境の工夫などの関わりや支援を行います。
2-2.生活援助
対象者が日々の生活を送ることができるように、調理、食事の準備、掃除、買い物、洗濯、整理整頓などの身のまわりの援助を行います。
対象者の希望や生活スタイルに合わせることも大切ですが、対象者の健康状態に合わせたメニューの提供、食材の形状・硬さに配慮した調理や、対象者の動線を考慮し、転倒予防に配慮した整理整頓など、安全で自立した生活に向けて援助を行います。
2-3.家庭介護のアドバイス
介護福祉士は、サービスを直接受ける対象者だけでなく、家族に寄り添って介護における相談に応じ、アドバイスを行います。毎日の生活での介助法や関わり方、声のかけ方などの助言、介護における全般的な相談にも応じます。
アドバイスは対象者と介護者の両方に負担が少なく、安全に行えて、かつ家庭の状況にあった介助方法や助言であることが望まれます。
2-4.介護用具を使う際の指導
介護の現場では、車いすや介護シューズ、介護用のスプーンや箸、介護衣類、排泄用品、口腔ケア用品など、さまざまな介護用具が使われています。
そのため介護福祉士は、それぞれの介護用具を使う目的や安全で正しい使い方、介護用具の選び方などを、対象者と介護者の状況に合わせて指導や助言を行います。
対象者自身の能力を活かして動作を行ったり、対象者・介護者が少ない負担で介助を行ったりすることを目的としています。
2-5.ヘルパーへの指導や助言
介護の現場では、介護福祉士以外にもヘルパーなどの介護職員が多く働いています。
その中で、介護福祉士が介護現場のリーダー的な存在となり、医療専門職やケアマネジャーなどの他職種とも方向性を確認したうえで、他の介護職員へ介護方法の指導や関わり方の助言を行います。
対象者の自立した生活に向けて、対象者に関わるスタッフ全員が同じ方向性を持って関わり、介助を行うことで目標達成に近づきやすくなります。対象者と介護職員双方に安全な介助法や関わり方であることが大切です。
3.介護福祉士と介護系の類似資格の違い
介護福祉士は、介護のほかの職種であるホームへルパー(訪問介護員)やケアマネジャー(介護支援専門員)と混同されがちです。どのような違いがあるのでしょうか。
前述したように、介護福祉士は介護の専門的な知識と技術を持った国家資格で、施設・病院・訪問などのさまざまな場所で活躍しています。
一方、ホームヘルパーは、在宅で療養している方のもとへ訪問して身体介護、生活援助を行う介護職です。介護職員初任者研修修了者、もしくは実務研修修了者でなければ訪問介護員としては従事できません。介護福祉士も訪問介護員として働く例もあります。サービス提供責任者になるには介護福祉士、実務者研修修了者などの要件があります。
ケアマネジャーは、施設や在宅などで療養している方が自立した生活を送るために、必要な介護サービスの計画を立て、介護サービス提供事業者との連絡調整を行う専門職です。介護福祉士の資格を持って5年以上かつ900日以上勤務すると、介護支援専門員の試験を受けることができます。
4.介護福祉士を目指すメリット3つ
無資格でも介護の仕事に就くことはできますが、介護福祉士の資格を取るメリットはあるのでしょうか。
ここでは、介護に関わるたくさん資格の中でも、あえて介護福祉士を目指すメリットについて解説していきます。
4-1.社会的信用が得られる
介護福祉士は国家資格であるという社会的な信用があります。介護職の中でも国家資格であるのは介護福祉士のみのため、介助者介護現場でのチームリーダーとして位置づけられ、介護職に対して指導を行う立場でもあります。対象者やその家族のみではなく、現場で一緒に働く他職種からの信用も得られやすくなります。
また、国家資格であることから資格手当がつく場合もあり、職場の待遇面や給料面でも優遇されやすいメリットがあります。
4-2.仕事の幅が広がる
厚生労働省では介護職の5割を介護福祉士が占めることを目標とし、介護職が「初任者研修修了者→介護福祉士→認定介護福祉士」と目指していくことを基本としています。
専門性を持った介護職の介護福祉士からさらに、キャリアアップやキャリアチェンジを図り、仕事の幅を広げることも可能です。
介護福祉士のキャリアアップについては、後ほど詳しく解説していきます。
4-3.人の役に立てる
介護福祉士は対象者の生活に密接に関わり、身体介護や生活援助を行う職種のため、対象者や家族から「ありがとう」と感謝されることの多い職種です。
高齢化が進み、介護が必要な高齢者が増え続ける日本では、専門的な介護の知識と技術を持った介護福祉士は社会に欠かせない存在です。
感謝の言葉を受け「人の役に立っている」という実感を得られるだけなく、社会的にも必要とされる人材であるため、やりがいを感じられるでしょう。
5.介護福祉士になるには?4つのルートをチェック
介護福祉士になるには次の4つのルートがあります。
- 養成施設ルート
- 福祉系高等学校ルート
- 実務経験ルート
- 経済連協定(EPA)ルート
これらの4つの方法について、それぞれ詳しく解説していきます。
5-1.養成施設ルート
一つめは、介護福祉士養成施設に通う方法です。
高校卒業後に介護福祉士養成施設に通い、卒業すると介護福祉士国家試験の受援資格が得られます。国家試験に合格すると介護福祉士を取得できますが、令和8年度までは、卒業後5年間は無条件で介護福祉士になることができます。
5-1-1.養成施設の種類
介護福祉士養成施設には、文部科学大臣及び厚生労働大臣の指定した学校、または都道府県知事の指定した養成施設で、大学・短期大学・専門学校・1年制養成施設があります。
持っている資格の有無によって、以下のように指定養成施設に通う期間が異なります。
指定養成施設校に1年通う場合
福祉系大学卒業者、社会福祉士受験資格保持者、保育士資格保有者は1年制の養成施設に通い卒業することで介護福祉士になれます。
指定養成施設校に2~4年通う場合
特定の資格を持っていない場合は、指定養成施設に2~4年通って卒業すると介護福祉士となれます。指定養成施設へ入学するには、高校卒業、もしくは高等学校卒業程度認定試験の合格が必要です。
5-1-2.養成施設で学ぶ期間と学ぶ内容
前項で述べたように、養成施設にはいくつか種類があります。それぞれの養成施設別の学ぶ期間と内容は次のとおりです。
大学:4年間
介護福祉士の科目以外に、一般教養や福祉全般の幅広い知識を身に付けられます。4年間の充実したカリキュラムにより、専門的な研究を進めることもできます。
短期大学:2年間
短大では、2年間という限られた期間で、必要な専門科目の単位と一般教養の科目の両方をこなすため、過密なスケジュールをこなす必要があります。
専門学校:2~3年間
専門学校は2年制がほとんどですが、一部3年制の専門学校もあります。即戦力につながる専門的、実践的な学びが中心となり、臨床実習や演習が充実しています。
1年制養成施設(保育士資格保有者):1年間
保育士資格を取得した人が、介護福祉士国家試験の受験資格取得に必要な科目を、最短で取得できるカリキュラムとなっています。保育所と介護施設を持っている福祉事業所もあり、保育士と介護福祉士のW資格を活かして幼児にも高齢者にもケアを行うことを目指せます。
1年制養成施設(社会福祉士資格保有者):1年間
令和3年3月現在、社会福祉士資格保有者の1年制養成施設はありません。
5-1-3.介護福祉士試験の義務化
平成28年度までは、高校卒業後に指定養成施設を卒業すると、国家試験を受けることなく介護福祉士資格を取得できていました。
しかし、介護福祉士の国家試験の義務化が検討され、令和8年度までは卒業後5年間と期間が限定されたため、令和9年度以降は国家試験の受験が必須となりました。
平成29年度から令和8年度末までに介護福祉士養成施設を卒業した場合
国家試験を受けなくても、卒業後5年間は介護福祉士になれます。
その後は、卒業後5年間続けて介護の仕事をしていれば、介護福祉士のままでいられます。国家試験を受けて合格した場合でも、卒業後5年経ってからも介護福祉士となります。
令和9年度以降に卒業した場合
養成施設卒業後、国家試験に合格することが必須となります。
5-2.福祉系高等学校ルート
福祉系の高校を卒業して介護福祉士を目指す方法です。入学年や福祉系特例高校への入学によって受験資格が変わります。
5-2-1.平成20年度以前入学の場合
平成20年度以前に入学し、改正前の社会福祉士及び介護福祉士法において、定められている科目と単位数を高校で履修し卒業している場合は、いずれかの方法を選びます。
- 介護技術講習を受けたのち、筆記試験のみ受験する(実技試験は免除)
- 筆記試験と実技試験の両方を受ける
5-2-2.平成21年度以降入学の場合
平成21年度以降に福祉系の高校に入学し、卒業した場合は介護技術講習の受講や実技試験を受ける必要はありません。介護福祉士筆記試験を受験して、合格すれば介護福祉士資格を取得できます。
5-2-3.福祉系特例高校を卒業した場合
福祉系特例高校にて所定の単位を履修して卒業した場合は、介護の実務を9カ月以上経験することが必要です。
そのうえで、介護技術講習と介護福祉士筆記試験を受けるか、筆記試験と実技試験を受けて合格すると介護福祉士資格を取得できます。
5-3.実務経験ルート
福祉系高校や介護福祉士養成施設に通わずに、介護の実務経験を積むことで介護福祉士を目指すルートです。
3年以上介護業務の実務経験を積み、養成施設等で「介護福祉士実務者研修」を修了するか、もしくは、「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」の両方を修了して、介護福祉士筆記試験を受けて合格すれば介護福祉士資格を取得できます。
ただし、介護職員基礎研修は平成24年度末に廃止されているため、介護職員基礎研修を修了していない人は、介護福祉士実務者研修修了が必要です。
5-4.経済連携協定(EPA)ルート
日本で介護業務の研修を受けながら介護福祉士資格の取得を目指すインドネシア人、フィリピン人、ベトナム人のためのルートです。
公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)による受け入れ施設で研修責任者のもと、介護業務の実務経験を3年以上積み、介護技術講習または実務者研修を受け介護福祉士筆記試験を受けるか、介護福祉士筆記試験と実技試験を受け、合格すると介護福祉士資格を取得できます。
6.介護福祉士の就職先
介護福祉士の資格を取得した場合、具体的にどのような場所で働けるのでしょうか。代表的な施設別に解説していきます。
6-1.特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護認定を受けて常に介護を必要とする高齢者の方が入居されている施設です。入居の期限がなく、長い期間入居している人が多い点が特徴です。厚生労働省の調査では平均在所期間は約4年となっています。(出典:厚生労働省)
この施設での介護福祉士の仕事は、排泄や食事、入浴、移動など生活全般の身体介護、健康管理、炊事や洗濯などの生活支援、レクリエーションの実施など、入居する人の生活を支える介護を行います。
6-2.介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)は、病気やけがで日常生活に介護が必要になった人が、在宅復帰を目的としてリハビリテーションをメインに行う入居施設です。3か月ごとに入所判定が行われるため、入居者の入れ替わりのスパンが比較的短いことも特徴です。
介護福祉士は、看護職やリハビリテーション職などの他職種と関わりながら、生活動作の身体介護や健康管理、生活支援、リハビリテーション、レクリエーションなど、自立に向けた介護を提供します。
6-3.介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは高齢者向けの居住施設で、介護が必要な状態になった人が排泄や食事、入浴などの介護サービスを受けています。
介護福祉士は、排泄、入浴、食事、着替えなどの身体介護や洗濯や掃除などの生活支援、健康管理、レクリエーションの実施などを行います。住居として生活されているスペースのため、一人ひとりの生活に合わせた介護や支援が求められます。
6-4.訪問介護事業
訪問介護事業は、在宅で療養している方の自宅に訪問し、排泄、食事、入浴、着替えなどの身体介護と、掃除や調理、買い物、洗濯などの家事を行います。通院のための車への乗り降り介助も含まれます。
利用者の生活スペースに入って介護するため、利用者宅の生活に合わせた介護・支援や家族とのコミュニケーションも必要です。訪問介護員として直接介護を提供するほか、訪問介護員のまとめ役であるサービス提供責任者や、事業所の管理職として活躍する介護福祉士もいます。
6-5.デイサービスセンター
デイサービスは、利用者が自宅から通って食事や入浴などのサービスを受ける通所施設です。
介護福祉士は、利用者への食事や入浴、排泄などの身体介護、生活の相談、健康状態の確認に加えて、利用者が活動的に過ごせるように、心身の機能維持を目的とした体操やレクリエーションなどの実施も行います。自宅から通所施設までの送迎や乗車時の昇降介助も含まれます。
6-6.身体障害者療護施設
身体障害者療護施設は、身体に障害があり、日常生活に常に介護を要する方が入居または通所して過ごす施設です。排泄や食事、入浴などの日常生活の身体介護、掃除や洗濯などの生活援助、健康状態の管理に加えて、自立した社会生活を送るための生活訓練や就労に向けた作業訓練、機能訓練などを行います。
6-7.医療機関
病院などの医療機関でも介護福祉士は活躍しています。
入院している患者の清拭や排泄、入浴、食事、移乗や移動などの身体介護、ベッド周りの掃除や整理整頓などの生活支援や機能訓練などを行います。
医学的管理下にあるため、看護師やリハビリテーション職などの医療職との関わりも多く、他職種との連携が必要です。
6-8.その他
介護福祉士は、上記で紹介した施設のほか、市町村の介護や生活に伴う相談を受ける窓口で「公務員」として働く場合もあります。
本人や家族から相談を受け、介護サービスや介護用品の案内や各事業所の紹介、生活におけるアドバイスなどを行います。施設で働く介護福祉士からの相談を受けることもあります。
7.介護福祉士のキャリアアップやキャリアチェンジ
介護福祉士として働く場合、将来的に目指すことのできるキャリアの道は複数あります。
その中でも3つの代表的な例を紹介します。
7-1.看護・セラピストなど他の資格を取得する
看護師や作業療法士・理学療法士・言語聴覚士といった、セラピストを目指す道があります。
日常的な医学管理を行う病院や介護医療院などでは、医療的な視点でのケアや関わりと、介護的な視点でのケアや関わりの双方が必要です。
介護福祉士が、医療的なケアを行う看護師やセラピストなどの資格を取得すれば、介護・医療の両側面からサポートできる医療従事者を目指せるでしょう。
●介護福祉士と作業療法士の国家資格をダブルで取得すると最強である理由
7-2.ケアマネジャーになる
利用者の生活状況を把握し、介護サービスと結びつけるケアマネジャー(介護支援専門員)となる道があります。
介護福祉士として介護の現場をよく知っているからこそ、ケアマネージャーになれば、利用者に本当に必要な介護を見極めてサービスを提供できるでしょう。また、家族が抱える悩みや相談も共感し、解決に導くことができます。
7-3.リーダー・管理職・施設長を目指す
介護職でのリーダー・管理職・施設長は、具体的には次のようなキャリアを目指せます。
- 介護現場で介護職員をまとめ、指導やアドバイスを行うリーダー
- デイサービスや訪問介護事業所の管理者
- 特別養護老人ホームや有料老人ホームの施設長
- 訪問介護事業所のサービス提供責任者
訪問介護事業所のサービス提供責任者は介護福祉士が資格要件となっています。特別養護老人ホームの施設長は社会福祉主事の要件、社会福祉事業に2年以上従事、社会福祉施設長資格認定講習会の受講などの要件を満たすことが必要です。
介護現場で利用者に関わりながら、質の高いより良い介護の提供のために介護職員をまとめ、運営していくマネジメント職として働く道を目指せます。
8.介護福祉士の将来性
厚生労働省では、介護福祉士の目指すべき像として以下を提示しています。
- 専門的な知識と技術を持って質の高い介護を提供する
- 利用者の変化に合わせた柔軟な対応ができる
- 利用者の社会的背景や心理的背景も捉えた介護ができる
- 他職種と協働してチームケアを実践する
(出典:厚生労働省)
上記のように、介護福祉士は介護職の中心的な存在として、質の高い介護の提供と介護職の育成を図ることが期待されています。
ただし、介護業界では介護職員の有効求人倍率は全職種よりも高く、介護の人材不足が問題になっています。日本では今後も高齢者の割合が増加する見込みから、介護福祉士をはじめ、介護を担う人材はさらに必要になるでしょう。
特に、認知症の専門的な介護や、たん吸引などの医療的ケアといった幅広く活躍できる人材が必要とされています。
9.おわりに(介護福祉士を目指している高校生へ)
これからの日本では、一人ひとりに合った質の高い介護を提供することが求められています。その点、介護に関する高い知識と技術を持つ介護福祉士なら、利用者が心から満足できるサービスを提供できるでしょう。
また、介護業務に加えて、リーダーとしての指導やアドバイスなど、人材マネジメントにも興味を持って仕事の幅を広げて、介護分野のプロフェッショナルを目指してみるのもよいでしょう。
さらに、介護福祉としての資格や仕事のキャリアに加えて、作業療法士など医療分野の国家資格も取ると、医療・介護に精通した現場で欠かせない人材として価値を高めることができるでしょう。
この記事を書いた作業療法士の先生
津留嵜 衣里子先生(作業療法学科 担当)
大分県の昭和学園高等学校(福祉科)を卒業後、介護福祉士国家資格を取得。その後、久留米リハビリテーション学院へ進学し、作業療法士として就職。介護の知識を生かして活躍後、作業療法士を育成する教員として母校へ戻ってきました。